トルトゥーガの住人 ページ16
スパロウ達の様子を見てみる限りでは話が長引きそうだ。
退屈しのぎにスマホを求めていつものようにポケットに手を入れようとするが勿論スマホなどない。それどころかポケットすらこのロングスカートにはついていない始末だ。
虚しくビロードの布をすり抜けた右手を力無く壁に打ちつけた。
「嫌なブラウスに嫌なスカート。」
私が思わずため息をつくと、隣にいたウィルがこちらを向いて言った。
「でも高級で立派なものばかりだ。」
「はぁ。ウィルは分かってないのね…。海賊になったのよ?私は!…きっと素晴らしい冒険が待ち受けてるに違いないわ!」
私は、これから始まるであろう冒険に胸をはずませた。
が、肝心のウィルの応答がない。
「ウィル?」
いつの間にかブロードウェイ調に歩き出していた足を止めて後ろを振り返ると、ウィルは酔った女に絡まれていた。
心の中で冷やかしをいれながらも嫌そうな顔のウィルの隣に立つと、女は仕方なさそうに去っていった。
スパロウの方を見ると、これまた一段落着いたようだ。
「スパロウ?話は終わったかしら。」
「あぁ。今終わったとこだ。それよりあんたも一杯どうだ?」
「ジャック…!」
飲みかけのビールを差し出したスパロウを、ウィルがすかさず止めに入った。
「冗談だって。そんな怖い顔するな。」
スパロウはおずおずと引き下がった。
どうやら彼は自分の周りで波風をたてたくないらしい。
”調子のいいヤツ。”心の中で悪態をついていると、スパロウの向かい側で話していたあの豚小屋の男がビールを置いて立ち上がり、酔いがさめたように嫌に真面目な顔をして、私に向き直った。
「ジャック…。こ、こりゃあたまげた。なんて美しいお嬢さんなんだ…。」
彼は私のほうを見たままスパロウに言った。
「ジョシャミー・ギブスだ。」
茫然とこちらを見て直立不動のギブスの手を、スパロウが人差し指でつついたが、ギブスは右手でスパロウの指をはたいた。
「お嬢さん。どこかの王女様じゃ無いだろうな。」
ギブスが右手を差し出した。
「いいえ。ただの海賊です。」
私は新たに仲間となった航海士、ギブスと握手をかわした。
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Caesar(プロフ) - ティコ。さん» 返信遅れて本当にすみません!!m(_ _)m面白いという御言葉すっごくありがたいです!!ありがとうございます!!!更新頑張りますね! (2018年3月1日 19時) (レス) id: 0b14e887c8 (このIDを非表示/違反報告)
ティコ。(プロフ) - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!あと、1つ質問なのですが、名前は固定ですか? (2018年2月28日 12時) (レス) id: e878cfb355 (このIDを非表示/違反報告)
ダージリン(プロフ) - むらなかさん» 追記:本当にありがとうございます! (2017年8月7日 21時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
ダージリン(プロフ) - むらなかさん» あれ見たらファンになっちゃいますよね!その気持ち凄く共感できます!! (2017年8月7日 19時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
むらなか(プロフ) - 私もパイレーツファンでいつも楽しく読ませていただいてます。更新楽しみにしてます!笑笑 (2017年8月7日 17時) (レス) id: ce8b8b5d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ダージリン x他1人 | 作成日時:2017年7月1日 15時