検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:9,637 hit

悪夢の始まり ページ2

「暑いなぁ〜。」

『そうだね〜。』


なんて他愛もない会話をしながら自転車に乗る。

今は夏。まあ夏といっても残暑なんだけど。

二人で一つの自転車に乗って、風を切るように走る。


「あ、アイスでも食べて行かん?」

『いいね!食べて行こ!』


初兎の提案で私達はコンビニに立ち寄った。

私が買ったアイスはサイダー。初兎が買ったアイスは苺。


再び自転車に乗って、近くの公園で降りた。

そしてベンチに腰を降ろして、アイスの袋をベリッと破った。

破れた袋から覗くのは、爽やかな色をしたアイス。


「一口もーらい!」

『あ!ちょっと初兎!!』


アイスをボーッと眺めていると、初兎が私のアイスを一口齧った。


「ごめんってw。ほら、僕のも食べていいから!」


ふふ、と笑いながら苺味のアイスを差し出す初兎。

私は遠慮なくそのアイスを齧った。さっきの仕返し。


「うわ。お前めっちゃ食べるやん!」

『しーらない。』


そう言って自分のアイスを齧る。

やったな〜、なんて隣で初兎が言っているのを聞き流しながら。


『ねぇ初兎。初兎は私のこと置いていって何処かに行かない?』


ふと口をついて出た言葉だった。

初兎は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んで答えてくれた。


「大丈夫やって。絶対に何処にも行かんから。」


初兎はそう言い、私の頭を優しく撫でた。

そして立ち上がり、空になったアイスの袋をゴミ箱に捨てた。


「じゃあそろそろ帰ろか。」


そう笑って、初兎は自転車の方へ向かった。

それに置いていかれないように私は初兎を追いかける。


「もう9月か。早いな〜。」


そう言い、自転車を押す初兎の横顔はずっと変わっていなかった。

そうだね、初兎の隣を歩きながらそう答える。

ふと、誰かにぶつかって車道に出た。


『え...?』

「っ...A!!」


ガシャンと初兎が自転車を投げ捨てる音。

初兎が私を呼ぶ声。

耳を覆いたくなるようなブレーキの音。

どんどんと早くなっていく鼓動。

いうことを聞かない身体。

誰かに突き飛ばされる感覚。

何かがひしゃげる音。


視界が赤く染まっていく。

林檎よりも、夕日よりも、初兎の苺味のアイスよりも、真っ赤に。

そんな光景を見て、自分のものとは思えない程の掠れた情けない声が出た。


『しょ...う...?』

白昼夢→←設定



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (68 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
34人がお気に入り
設定タグ:iris , いれいす , 夢小説   
作品ジャンル:その他
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちと(プロフ) - まじで泣いてしまう...初兎ちゃんと、夢主さんにはあのままの日常を送ってほしかったなぁ... (8月22日 15時) (レス) @page16 id: f6b0a849c1 (このIDを非表示/違反報告)
Near - ひーいれりすさん» 返信遅れちゃいました〜!すみません💦涙を止めること....できないですねw ハンカチで拭いといてください!!() (2023年3月26日 14時) (レス) id: 20a94c6827 (このIDを非表示/違反報告)
ひーいれりす - すいません誰か涙を止められる人はいませんか… (2023年3月6日 23時) (レス) @page23 id: 166743b295 (このIDを非表示/違反報告)
Near - 瑠夏さん» 目からスライムという表現で笑ってしまった() 人を泣かせる天才....。ありがとうございます(?) (2022年11月14日 20時) (レス) id: 20a94c6827 (このIDを非表示/違反報告)
瑠夏 - やばっ目からなんかスライムが止まらない(;~;)Nearさんは人を泣かせる天才かな?? (2022年11月14日 6時) (レス) @page23 id: 427d2fc8fd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Near | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Naer/  
作成日時:2022年9月5日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。