夏の魔法にはご注意を。

「3」 ページ32

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「あ、いた！望！」





神社の鳥居に寄りかかる二人の男の子。

目が悪いから顔は見えないけれど、どちらの男の子もすごく背が高いから目立つ。


それに、チラチラと女の子が振り返ってるから、多分注目されてるな。

二人とも。


慣れたように男の子の名前を呼ぶ彼女に驚きつつも、慣れない下駄で転ばないように、小さい歩幅で歩く。

うーん、ここまでして浴衣着る必要あるのかな。

最近の女子の気持ちはあまり分からない。





「浴衣着てきてくれたん？
よかった、俺らも着てきたからさ」

「うわ、本当だ。
目立ちすぎるのも困るんですけどー」

「ふは、ごめんて、浴衣で一緒に回りたかってん。
それに浴衣の方が可愛ええし」

「なっ、そう言えば許すと思ってるでしょ！」

「いっった！！ほんまに思ってへんから！！」





突然始まった話についていけず、もう一人の男の子を見る。


近くで見たら、すごいかっこいい。

なんか、心臓うるさいな。
意識しちゃってるかも。





「望、俺らもう行くで？」

「ん？ああ、はぐれんようにな！
九時から花火やからここでまた落ち合おか」

「ん、ほなまたあとで」





ぎゅっと握られた手。
突然のことに頭が追いつかない。


助けを求めようと友達の方を見てもニコニコしながら手なんて振っちゃって。

え、なんで。助けてよ。





『あ、のっ、』





精一杯、振り絞った声。

それでも声は本当にか細くて、こんな騒がしいお祭りの日に聞こえるはずない。


なのに、ん？って止まって聞いてくれるから。

ちょっとだけ、ドキッとする。





「あ、ごめんな、嫌やったよな」





初めてちゃんと見た顔。


提灯の淡い光に照らされたその姿は、他の誰よりも「かっこいい」が似合ってる。





『え、あ、』





言葉が繋げない。


友達に塗ってもらったピンク色のリップ。

それを塗った唇の動きが、彼の前ではやけに気になっていた。

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