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「グギ」

「なに……うわ」


寝る前。Aはベッドに寝転がる俺に、身を乗り出して声をかけてきた。
寝返ったら思いの外至近距離にあった顔に驚く。

あ、ごめん。Aは身を引いて、ベッドの縁に遠慮がちに手を置きながら俺の顔を見る。


「次のお休みの日、レッスン終わったらイヤーカフ見に行きたいんだけど、その……一緒に行ってくれませんか?」

「そんなこと……いいよ」

「ほんと? 嬉しい。ふふ、友達とお出かけ……ふふふ」


約束を取り付けると上機嫌で自身のベッドに戻り、そのまま寝た。なんだあいつ。
世間知らずの御坊ちゃまが庶民と遊ぶ機会に喜ぶみたいな、なんかそんな感じだ。中学時代の始まりを言葉の通じない環境で過ごしたらああなるのか。

などと思いつつ、頭の片隅ではAに似合うアクセサリーを考えてしまう俺もまた、友達との買い物ってのにワクワクしてるんだろう。





シルバーの無地が似合う。

俺が勧めたイヤーカフを装着したAは左耳をこちらに向けて、どう? と微笑んだ。少し緊張した風に。


「似合う」

「でも、もっと個性的なのじゃないと……埋れちゃう気が」

「? お前柄シャツよく着るからシンプルな方が合わせやすいと思うけど」

「なるほど。説得力ある」


ふんふん、上機嫌に頷く姿に、俺はもしかしてセンスがあるのかもとか思ってしまう。Aって人を調子に乗らせる。

横顔を見ていると、本当に人形みたいだと思う。単に綺麗だと思うというより、作り物じみているというか、画家の描く女性の絵みたいだ。

存在感のない鼻が横から見るとツンと高くて、睫毛が細くて長い。体温が無く見えるのに、ふわふわした髪の毛は生き物っぽい。
Aは俺にもよく人形みたい漫画みたいだというけれど、Aの方がよほどそれらしい。

会計を済ませたAは二つ小袋を持ってきた。


「それは?」

「袋分けてもらったんだ〜」

「ん……? 中身は?」イヤーカフは既につけている。

「指輪」


はい、と言ってAは俺にそれを一つ渡す。
首を傾げながら受け取った。中身を見た。デザインのシンプルなシルバーリング。


「おそろい」Aもそれを取り出して、指につける。「なんてね。グガに似合いそうだったから買っちゃった。僕もデザイン気に入ったし……何より、今日のお礼に」


何も深い意味なんてないんだろう。紅潮する自分の顔を覆うように、下を向いてありがとうと呟いた。

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- 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虞犯少年 | 作成日時:2017年10月7日 22時

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