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目が覚めて、夜が明けたことを知る。

昨日の夜、結局Aは泣き止まなくて、俺は自分の居場所に迷って部屋に帰った。
皆とっくに消灯していた。俺はベッドに潜り込んで、スマホゲームを始めた。けれど弱り切ったAの姿が頭から離れなくてすぐにやめて眠った。

そして夜が明けて、学校が休みであることを知る。

頭がぼーっとしてこのまま朝をだらだら過ごそうかとも考えたけれど、ダンスレッスンがあるのを思い出して気だるく起き上がる。

向かいのベッドにAがいるのに気づいた。
Aが寝ているところなんて滅多に見ないから、珍しいなと、ベッドから出てAの前に行く。


「……」


前髪をどかす。青あざ。
耳に髪をかける。切り傷。
寝巻きから覗く首元。かさぶた。
荒れて血が滲む唇の横が切れていた。


「……」


背中の一閃の傷とは負った時期が違うように見えた。
特に口元のなんかは、喧嘩の傷に似ている。

泣き腫らした目から涙が一つ落ちた。
ぎょっとした。何か夢でも見ているのだろうか。

その涙が枕に飲み込まれた頃、Aの目がゆっくりと陽の光を受け入れる。
やばいと思う頃にはパチリと開いた。


「……!」


何を言われるかと思ったらAは飛び起きて、ばたばたと部屋を出ていった。
ちょっと寝顔見てるくらいいいだろ! と、さっきの焦りは怒りに転換。

内心悔しさと舌打ちを交えながら着替えようとスウェットを取り出すと、ばんっ! と大きな音を立ててAが飛び込んできた。
ぎょっとして目を見開く。


「あ、あの!」どうやら顔を洗ってきたらしい。

「うお」

「何か用だった?」

「別に、用は……」あるな。「……昨日の」

「昨日の?」


やけにぽけっとした顔のAだ。俺の存在に気づいていなかったのだろうか。


「遅かったじゃん。帰ってくんの」

「……なんでもない」

「……またかよ」


ぼそっと吐く。Aは枕元のスマホを手に取りながら顔を上げて、首を傾げてどうしたの、とだけ。


「……なんでもない」

「そう」


Aはスマホを見て、ニュースサイトを見て、少し困ったような顔をしてから置いて、服を選び始めた。

そして服を持って、外に出ようとする。


「いやいやいや」

「へ」

「女かよ。ここで着替えればいいじゃん」

「や、だ」

「……傷なら気にしないから」


びく。Aは体を震わせて、視線を迷わせてドアノブにかけた手を止めた。

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- 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虞犯少年 | 作成日時:2017年10月7日 22時

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