第14話 ねだり上手 ページ15
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「よーし、到着」
毛利探偵事務所のビル前に着くと、私はコナン君の手を離した。コナン君はふっと私を見上げて、「もう帰っちゃうの? 中でお話ししようよ」とこちらに響くような寂しげな表情を見せた。
先程見た彼の、あの冷静沈着で小学生らしからぬ表情とは程遠かった。
「でももう六時だから…コナン君おじさんとポアロでご飯食べるんでしょ?」
「じゃあ一緒に食べようよ! ボク、まだA姉ちゃんに聞きたいこと、いっぱいあって…」
私の手を引っ張ってビルの中に行こうと言い出すコナン君にどうしようかと悩んでいると、階段から小五郎おじさんが降りてきた。
「こらコナン、Aちゃんに何か我儘言ってんじゃないだろうな?」
「おじさん! ねー今日A姉ちゃんも一緒にポアロでご飯食べちゃダメなの?」
「Aちゃんと一緒に?」と聞き返した小五郎おじさんは、私を見て「Aちゃんが良いなら構わねーが…」とコナン君に答える。
ホラ、と得意げに私を見たコナン君に苦笑が漏れる。いやはや最近の子供はねだり上手だな、と思いつつ私は「じゃあそうしよっか」とコナン君に返事をした。
スケボー置いてくるね、と言ってコナン君は上に引き上げていく。小五郎おじさんも何か用事を思い出して、探偵事務所の中に一度戻っていった。
次に出てきたのはコナン君だけで、小五郎おじさんは何故か事務所から出てこない。どうしたのか、とコナン君に聞くと、「特番で沖野ヨーコのライブ特集がやってるみたい」と半ば呆れ笑いで言ってきた。
「二人で食べて来いだってさ」と元気よくいうと、コナン君は私の手を引いてポアロの入り口に向かって小走りした。
「……コナン君、学校に好きな人とかいるの?」
「えっ?」
ポアロに入ってご飯を注文した後、私は何気なくコナン君にそう問いかけた。こうして料理店の中でコナン君と向かい合っているうちに、数週間前ファミリーレストランでコナン君に聞かれたことをふと思い出したのだ。
コナン君は顔を強張らせて、お冷を流し込んだ。お腹を冷やしてしまうという私の忠告は聞こえなかったらしい。
「い、いないよ。ボク、まだ子どもだからそういうのわかんないし…」
「えーっ、なのに私に好きな人がいるのか聞いてきたの?」
「アハハ……」
コナン君は薄い苦笑を顔にのぼらせて、気まずそうに頬を掻いた。ませてるのか、ただ探究心が強いだけなのか。目の前の彼には驚かされてばかりだった。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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