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現世に戻ろうと、門に足を一歩踏み入れた時だった
「行くな………っっ!!」
服を掴まれたのは
必死そうに走ってきたのが分かるほど
呼吸が荒れていた
私を掴む手が震えていた
「…………」
振り向いてはいけない、と思った
情が移ってしまうのは、諜報員にはあるまじき行為
そのまま、振り返らず手を振りほどき門の中に消えるのが最も正しいのだ
「……ごめん」
情が移ってしまうのは、
諜報員にあるまじき行為
なのに、何故喋ったのだろう
何故、振り向きたいのだろう
「A、!」
初めて名前を呼ばれた
こんな時に限って一番思い入れのある名前で来たのが運命の皮肉かと笑った
それでも、歯を食いしばって歩き出そうとした
私は、政府の調査員
それに対して誇り持ち、
私の存在意義はそれに命を懸けること
振り向いてはいけない
「………………ごめん」
何故、私の視界が歪むのだろう
頰から熱い何かが流れ落ちている
鼻が詰まって、息ができない
『なまくら男士の発見された本丸は、
全ての刀剣男士の刀解が決められてる』
どうして、こんな時に榊原さんの説明が呼び起こされるんだろう
『どうしてですか?
なまくら男士だけ刀解でいいじゃないですか』
『Aは袋詰めされたミカンが一つ腐っていたとして、袋ごと捨てない?
普通の人たちは、カビの胞子がついてるからって
"すてる"、ぽいって』
近くにあった空き缶を
ゴミ箱に投げ捨てた榊原さん
その時のアルミ缶がゴミ箱にあたってよく響いたのを覚えている
『それと、おんなじ』
ここで、自分が帰ってしまったら
彼にも二度と会えないのだ
それが、どうしようもなく辛かった
「……Aっ」
Aは暴れ馬のような感情に任せて
振り向いてしまった
私の顔を見て、目を見開く
________________________大倶利伽羅
もし、連れていけるのなら
連れて行ってしまいたい
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雪月花のとびうお(プロフ) - 大変長くなってしまいましたが、これからも応援しております。また、こちらの様な作品、楽しみにしております。 (2019年12月29日 7時) (レス) id: b36649e14a (このIDを非表示/違反報告)
雪月花のとびうお(プロフ) - 完結していて驚きました。完結して頂けていて、本当に嬉しく思います。また、久しぶりだったので初めから読んだのですが、素晴らしい作品です!!所々で涙が出ました…。 (2019年12月29日 7時) (レス) id: b36649e14a (このIDを非表示/違反報告)
雪月花のとびうお(プロフ) - 初めまして!昔こちらの作品を読んだ時は、主人公が現世に戻った瞬間で更新が停止していたのですが…。しばらく見れなかった期間もあって、新しくアカウントを作り、久しぶりにこちらを探してみたら、 (2019年12月29日 7時) (レス) id: b36649e14a (このIDを非表示/違反報告)
大根パンダ(プロフ) - すずなさん» コメントありがとうございます(*´∀`*)示唆するために目が紫とは書きましたが番外編含み本編でははっきりと誰の子なのかは書いていません。主人公の設定は薬研藤四郎の子ということにしています。完結までお付き合い頂きありがとうございました。 (2019年2月6日 7時) (レス) id: 36e4821907 (このIDを非表示/違反報告)
大根パンダ(プロフ) - よっしーさん» コメントありがとうございます(´∀`)こちらこそ、完結まで読んで頂きありがとうございました!これからも、みなさんが楽しんでくれるような作品を書くように研鑽を積みます。 (2019年2月6日 7時) (レス) id: 36e4821907 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大根パンダ | 作成日時:2018年8月24日 20時