. ページ10
生配信を終え、レコーディング室に寄ってスタッフに挨拶を届けた。
防音室から外へ戻れば少し耳がキンとする感覚から解き放たれて、それすら懐かしく思う自分自身に笑ってしまって。
JH「ひとりで笑ってると不気味だよ？」
『わっ？！びっくりした〜帰ってなかったの？』
JH「うん、待ってた」
部屋から出たところでジェヒョンが待っていてくれたらしく、ひとりでクスクスしてるところを目撃されてしまった。恥ずかしい。
腰掛けたソファの隣を叩いてくれるから素直にそこに座れば、コーヒーまで差し出してくれる。
『私に？買ってきてくれたの？』
JH「そうだよ、俺これ飲まないでしょ」
一ヶ月会わなかったら忘れたの？なんて笑われてカップに書かれた文字を見れば、中身はソイラテ、2ショット追加。間違いなく私のためのオーダー。
そうだった、この人はそもそも オル チュク ア――"凍え 死んでも アイスアメリカーノ"。
韓国のイケてる子達はアホみたいにアイスアメリカーノを頼む。そして相変わらずアホみたいに言葉を略すから、通称"アア"の時点で意味不明だったアイスアメリカーノは、ついに"ア"にされてしまった。なんてこったい。
とにかく、この人にホットのカップを出された時点でそれは私のだということで。それに気付いた途端、指先から伝わるコーヒーの温かさが胸の辺りにまでじんわりと広がった。
隣でアアのストローを噛っている横顔を見上げると、何も言わずにただ微笑みを返してくれる。
器用に窪みを作る頬っぺたも、それに押されて細くなった目も、食べちゃいたいくらいかわいい。
カメラの前なのにAがちゅーしたから怒られちゃったじゃん、なんて。
ちょっぴり尖らせた唇もまたかわいくて指で摘まんでやれば、ムッとして振り払うように顔を振る。
そんな他愛もない瞬間がおかしくて、二人で顔を見合わせて笑って。このなんでもない時間があまりにも日常であることに気付いて。
そのありがたさや儚さや恋しさがごちゃ混ぜになった感情が、涙になって溢れ出た。
JH「もう〜、泣き虫だな〜」
よしよし、なんていたずらに笑うくせに、そっと頭を撫でてくれる優しい手のひらはアイスコーヒーに冷やされている。
『待っててくれてありがとう』
その手を包み込めば、私の体温が伝わって、ふたりの温度が溶け合うように同じになって。
JH「……待ってる間も、Aが支えだったよ」
その温度よりももっと温かい言葉に、私の涙は止まらなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1038人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆゆ(プロフ) - 冴木薫さん» コメントありがとうございます！腑に落ちて良かったです……！笑 個人的には、公私の境が曖昧な芸能界で人生を送らなくてはならないアイドル達が、少しでも生きやすい、ファンの理解のある世の中になればと願うばかりです。これからも応援よろしくお願いいたします！ (2020年12月3日 13時) (
レス) id: e6590da59e (このIDを非表示/違反報告)
冴木薫(プロフ) - ミッキーマウス最強アイドル論、めちゃくちゃ腑に落ちました…いつも楽しく読ませていただいてます！これからもベプカップルおよびゆゆさんをずっと応援しています…！ (2020年12月3日 10時) (レス) id: 3ed73169f6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し26462号(プロフ) - お返事ありがとうございます(; ; )いつも本当に楽しみにしてるので嬉しいです！精一杯応援させていただきます！笑 (2020年12月1日 20時) (レス) id: d4735a79a2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 名無し26462号さん» コメントありがとうございます！そうですよね、特に最近切ないところ多いので…… 更新頑張るので、幸せになれるよう応援おねがいします……！ (2020年12月1日 1時) (レス) id: e6590da59e (このIDを非表示/違反報告)
名無し26462号(プロフ) - 毎回泣いちゃいます！笑面白くて大好きだけど、早く幸せなお話読みたいです泣泣これからも楽しみにしてます〜！ (2020年12月1日 1時) (レス) id: d4735a79a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆゆ
| 作成日時：2020年11月23日 0時
