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(続き)



「じゃあ行こっか!」

るぅとくんの言葉にこくりと頷くと、彼は微笑みながらそっとわたしのキャリーケースを持って前を歩く。

なんだなんだ、さらっと大きい荷物を持ってくれるなんて、かっこいいなあ。

ぼけーっとしながら彼の背中を見つめていると、るぅとくんは立ち止まってくるりとこちらを振り返り、キャリーケースを持っていないほうの手を差し出して、「どうしたの、Aちゃん?」と首を傾けた。

…わたしよりも年下なのに、しっかりしてるな〜って見惚れてたんです。

今だって、人どおりの多い東京で身体ががちがちになってしまっているわたしに手を差し伸べてくれた。

みんなから腹が黒いだなんて言われているけど、そんなことない。素敵な男の子だぞ。

心の中で呟いて、ぱたぱたとぺたんこの靴のかかとを鳴らしながらるぅとくんのもとへ駆け寄り、差し出してくれた左手をぎゅっと握りながら、肩を並べてふたりで歩き始めた。





るぅとくんのお家は防音がしっかりしていて、音響設備も整っているし、作曲にも収録にも最適なのだそう。

今日はわたしが収録したデモ音源をるぅとくんが調整して、データをメンバーのみんなに送る予定だ。

みんなには送ったデータで各自歌を覚えてもらって、順番に収録して、そのあと編曲してようやく投稿する曲が完成する。

仮歌は曲のベースになるものだから、今回わたしは大役を任されたと言っても過言ではない。
プレッシャーはもちろんあるけれど、それよりもとっても楽しみだ。

なによりるぅとくんが、「仮歌をAちゃんにお願いしたい」と言ってくれたことがうれしかった。


あらかじめるぅとくんから音源をもらっていたので、家にいるときも新幹線に揺られているときも、何度も何度もメロディーを聴いたけれど、頭に残る素敵な曲だった。

わたしが一番に歌わせてもらえるなんて幸せだなあ。

早く歌いたい。早くメンバーにデータを届けたい。
るぅとくんが素敵なメロディーをつけて、ななもりさんが素敵な歌詞を考えた曲だ。

『苺色夏花火』、リスナーさんにも早く聴いてもらいたい…!


昂った気持ちを静めようと、隣を歩いていたるぅとくんを追い抜いて、彼の家がどこかもわからないままにわたしはまっすぐ続く道を駆けた。

「わ、Aちゃんそこ右、右!」



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みぃたろう(プロフ) - 初めまして!とぉぉおっても面白いです!あの、2018年の時って、3周年じゃないんですか?すいません、気になってしまったもので…。これからも頑張ってください!更新お待ちしています!! (2019年12月15日 14時) (レス) id: 6afeba1e2c (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めまして、さくりです。更新待ってます! (2019年11月4日 21時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゆんさん» とても励みになるお声をいただきありがとうございます:) 現在私事がバタバタとしておりましてなかなか更新ができずにいますが、今後書きたいことがまだまだあるのでもうしばらくお待ちいただければと思います…!よろしくお願いいたします* (2019年10月13日 8時) (レス) id: 15191b8c37 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 更新が待ち遠しいっす、、、、、、 (2019年10月11日 7時) (レス) id: 61b7b452c8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 刹銀さん» わ!ご指摘ありがとうございます…!早速訂正いたしましたっX( (2019年9月9日 21時) (レス) id: 15191b8c37 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月18日 21時

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