三十一話 不器用で弱い ページ32
それからは、稽古終わりにAさんがいることはなくなった。
でも欠かさず差し入れが置いてあって、胸が暖かくなった。
スモーカーさんもそれに気づいていた。
ス「すまねぇな、たしぎ。不器用なやつなんだ、昔からな」
そのスモーカーさんの言葉に、私は黙って頷くしかなかった。
ーーー
アラバスタのあの一件で、スモーカーさんは中将に、私は大佐に昇格した。
スモーカーさんは納得していなかったが、これが上のやることなのだと思い知った。
あれから更に強くなろうと苦闘する日々が続いた。
まだだ…ッ！強くならなきゃ…私はッ！
『はいそこまでー』
た「ッ！？Aさん…」
後ろから声をかけられ、驚き振り返ると、そこには半年ぶりくらいに見たAさんがいた。
『ダメだよ、身体壊したら元も子もないんだから』
そう言いタオルを差し出してくるAさんに、私は何と言えばいいのか言葉を探していた。
『大佐になったんだってね。聞いたよ、スモーカーは中将だもんなー』
私は頷きながらタオルを受け取った。
『おめでとう、ではないみたいだね。スモーカーもずっと機嫌悪いし』
た「はい…」
『弱い奴は死に方も選べない』
た「…え？」
『昔、ある人がよく言ってたの。この腐った世界で、それでも私たちは自分の信じる答えを探してる。それを突き通すためには地位も権力も必要で、どれだけ正しい正義を持っていても、弱ければ何もできない。私もそう思ってたの』
私はAさんの話を黙って聞いた。
Aさんはきっとすごく強いのだろう。
いつも彼女の気配に気づかないし、普段の動きもとても身軽で軽やかだ。
『でもね、本当に大切なものを守れない力なんて何の意味があるんだろうって何度も考えたの。まだその答えは見つからないんだ』
Aさんが振り返り、彼女の綺麗な紫色の目が私の姿を映す。
『ねぇたしぎちゃん。いつかこの答えがわかる日が来るのかな？』
真剣なAさんの眼差しに私は何も答えられなかった。
『ごめんね、変なこと言った。じゃあクザンに見つかる前に帰るね』
それがAさんとの最後の会話になり、Aさんはいつのまにか海軍から姿を消した。
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もえぎ(プロフ) - コメントありがとうございます！複雑なストーリーとなっていますので最終的にどうなるかはまだはっきりしていませんが、その可能性は大きいです！ (4月23日 21時) (
レス) id: 5993720d1e (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - この小説はトラファルガーローオチですか？ (4月23日 19時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
もえぎ(プロフ) - ご指摘ありがとうございます！気づかなかったので助かりました！ (2023年2月5日 12時) (レス) id: 5993720d1e (このIDを非表示/違反報告)
金成(プロフ) - お/り/ふ;らたってますよ (2023年2月5日 10時) (レス) id: 6328f81305 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ‘フラ立ってますよ！ (2023年2月5日 9時) (レス) @page1 id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえぎ | 作成日時：2023年1月16日 0時
