HERO【石川祐希】 (ページ25)

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気がつけば試合は3-2の接戦で
祐希君のいるPadovaが勝利を収めていた。

ヒーローインタビューには
オポジットの選手が呼ばれた。

私は試合の空気に気圧されて
ストレッチをしている選手を
ぼーっと見つめることしかできなかった。

祐希くんはこんなすごい世界で戦ってるんだ。

日本での試合を見たことがない私には
日本とイタリアの違いなんかわからないけど
それでも、祐希くんがとんでもなくすごいところで
一人で戦っていることはわかった。

「尊敬するなぁ」

私の小さなつぶやきは
勝利に沸くスタジアムの歓声にかき消されていった。

私も同じレベルで戦いたい。
世界のモデル達と同じレベルで。
彼の様に自由に、堂々と。

私には何が足りない？
スタイル？センス？個性？華やかさ？
考えれば考えるほど
頭がこんがらがってわからなくなる。

結局答えが出ないまま
気がつくと選手達は手を振りながら
退場し始めていた。

私も周りと同じように
拍手で選手を見送る。

入ってきたときと同じように
一番最後に退場した祐希くんは
会場全体に手を振りながらも
最後は確かに私の方を見て手を振ってくれた。