シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ5)

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Prologue -5 ページ5

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社会人になってからというものこんな反応ばかりだ。

だけど門限なんて私にとってはあって当たり前のものなのでその反応を見るたびにため息をつきたくなる。

まるで普通じゃないとでも言われているみたいで、実はあんまり気分が良くない。

「そうなんですか？大野さん」

「ええ実は。零時が門限なので、ここを出たらまっすぐ帰らないと」

「そうなんですね」

そう言った二宮さんはようやくつくねを口に入れた。

もぐもぐと噛んで、飲み込んで、ビールでのどを潤して。

そうしてまた私の顔を見ると、薄い唇が優しく弧を描いた。

「零時を過ぎて一緒にはいられないなんてまるでシンデレラですね」

「！」

どくりと心臓が跳ねた。

何気なく言われた言葉に頬が少しずつ熱を持つ。

「ニノ、なんか映画の台詞みたい…というか口説き文句みたいなんだけど」

「だって口説いてるもん。ね、大野さん」

「えっ…あの…」

どうしよう、今顔赤いかもしれない。

私はあわてながら二宮さんの笑顔から目をそらした。

逃げるようにぬるくなりかけたビールジョッキを両手でつかみ上げる。

顔を隠す様に一気に傾けた。

「いい飲みっぷり」

「俺酒好きなんで、一緒に飲みに行けますね」

「っ」

さらりと告げられた二宮さんの言葉にせき込みそうになって慌ててジョッキを引き離す。

二宮さんは素知らぬ顔で枝豆をぷつりとさやから押し出して薄い唇で吸い込んでいた。

目が合うと、また微笑まれる。

そういえば最初の方に「好きです」って言われたような…。

動揺する私の横で櫻井さんが耐えきれないというように喉で笑い始めた。

「あはは、いいじゃん大野、ニノに大人しく口説かれれば」

「ちょ…櫻井さん！」

完全に面白がっている櫻井さんはケラケラ笑いながらビールに口を付けている。

「俺のこと思い出すまで俺に口説かれてもらいますね、Aさん」

「な、名前……」

「大野さんだと距離ありますから」

にこやかにそう言う二宮さんは「いい名前ですねAって」なんてのんきにつぶやいている。

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