シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ39)

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Episode6 -4 ページ39

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茶色い封筒を振って中から紙を二枚つまみだす。

それは映画のチケットのようだった。

「駅前に大きい映画館があるじゃないですか。あそこのなんですけど期限が迫ってて、良ければ気分転換にでも」

二宮さんの目が私の目をのぞき込む。

真面目なことを言えば、結局仕事が進められていないからアイデアを絞り出すために私たちはもっと仕事をするべきである。

けれどこればかりは会議室で唸っていればどうにかなるというものでもない。

それを知っているからこそ二宮さんは気分転換に、なんて言い方をするのだろう。

ちょっとだけ悩んで、

「いいですよ。ご一緒させてください」

と二宮さんの顔を見上げて返事をした。

二宮さんの顔に嬉しそうに笑みが広がる。

「ほんとですか？やった、初デート」

「でっ…いやそのっ」

「んふふ、わかってますからそんなに慌てないでくださいよ。俺に付き合ってくれるんですよね、感謝します。これでチケット無駄にせずに済みます」

そう言うと二宮さんはチケットの入った封筒を鞄にしまい込む。

「それじゃあ、七時ごろに駅前で。また連絡します」

「…はい、お待ちしてます」

そうして二宮さんは自分の会社へと戻っていった。

櫻井さんは私の顔を見てニヤリと笑うだけで何を話したのかと聞いてくることはなかったけど、お昼を食べてる間中その顔が緩んでいたことが私は気になって仕方がなかった。

やっぱり、櫻井さんは私と二宮さんのことを楽しんで見ているのかもしれない。

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