シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ30)

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Episode5 -2 ページ30

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簡単に言うと、運営しているアプリで新しいイベントが配信されたのだけど、読み込みエラーが発生してアプリが落ちるという報告が昨日の夕方から相次いだ。

私たちも自分のアプリで確認してみたところ確かにその場所でアプリが落ちてしまう。

不具合として認識した運営チームはその復旧作業に追われることになった。

私はシステム面を担っているわけではないので一人先に帰宅したのだけど、さすがに様子が気になって早くに出社をしてきたのだ。

「大野は先に帰っていいよ、代わりに移植の方考えてくれ」と疲れ顔の櫻井さんに言われたからというのが昨日の帰宅理由であり、眠れなかった要因である。

移植と一言に言ってもシナリオもシステムもスクリプトも、何もかも新しいものを作るようなものなので、考えるべきことが実はたくさんある。

先方から新しく考えてくれと言われた目玉になる展開とギミック、それに合うシナリオをということでここの所製作チーム全体が考えを巡らせてはため息をつく、という状況になっていた。

時計の針が気が付けば十二時半を回っていた。

会議室の中で顔を寄せ合っていた私たちはふいに時計を見やった櫻井さんに続いて顔を上げる。

「うわ、もうこんな時間か。ごめん昼休みだね、休憩していいよ」

櫻井さんの一言にそれぞれが会議室を出ていく。

私もお昼を買ってくるために椅子から立ち上がった。

「大野」

「はい？」

「気分転換に外に食いに行こうか」

「いいんですか？」

「おー。松本も行くか？」

「行きます」

松本くんが何やら書き込んでいた紙から顔を上げずに言う。

ペンを置くと私と櫻井さんの顔を見上げた。

「暑いんで、冷たいものがいいんすけど」

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