シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ22)

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Episode3 -5 ページ22

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「俺は嬉しいですよ、仕事のせいで会えないと思ってたら、仕事で会えるなんて神様の贈り物ですかね」

「いや…それは…」

まるで何かの台詞のような言葉を二宮さんは恥ずかしげもなく言う。

隣にいるはずの櫻井さんは静かに資料に目を落としてしまっていてこちらを助けてはくれなそうだ。

何から助けてほしいのかは自分でもわからない。

恥ずかしいから、というのが一番近い気がした。

「楽しみです、Aさんと一緒に担当できるの」

「……よろしくお願いします」

「…うん、よろしくお願いします」

具体的にその言葉には答えず頭を軽く下げる。

二宮さんは一拍おいて、同じように頭を下げてくれた。

なんだか変な感じだ。

二宮さんとのご縁はなかったんだなってもう一日限りのことだったと思うことにしてたのに、まさか一緒に仕事をすることになるなんて。

人生何があるかわからない。

縁がなかった、と思ったばかりなのに。

これは櫻井さんの言うように縁があるということになるだろうか。

偶然か、運命のいたずらか。

そんなものは分からないけれど。

もう会えないかもしれないと思っていた二宮さんに再会できたことは思いのほか喜びとなって私の心を満たしていた。

今日から始まった新しい仕事も、なんだかうまくいくような気がしてくる。

うん、二宮さんに再会できたのは悪いことではない。

一緒に仕事をしていれば二宮さんとどこで会ったのかも思い出せるかもしれないし。

思い出してしまった後私と二宮さんの関係がどうなるかなんてことは、今はまだ現実味のない想像だからと私は気にしないことにしてコーヒーを淹れようと会議室を出た。

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