シンデレラ・ディレクション《ars/k.n/0617》 (ページ17)

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Episode2 -6 ページ17

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なにがあれかって、智兄さんも零時までには基本的に帰ってくる。

私がまだ学生の頃に作ったこの決まりごとは今でも当たり前に私たちの生活に存在している。

「櫻井さんいるから、そこらへんは大丈夫だと思う」

「そうだな」

智兄さんの櫻井さんへの信頼が厚い要因の一つは、私が櫻井さんと飲みに出た夜に門限を過ぎることがないからなのだろうと思う。

実際櫻井さんは私の門限のことを知って「大切にされてるな」と優しく笑ってくれた人だ。

そういえば二宮さんの前にそんなことを言ったのは櫻井さんと松本くんだけだったかもしれない。

「そういえば智兄さん」

「ん？」

「櫻井さん、恋人いるってさ」

「……そうかぁ」

なんで私より残念そうなんだろう。

とは、思っても口には出さないでおいた。

数日間連絡がなかった二宮さんから急に連絡が来たのはこの日の夜のことだった。

スマホの画面に浮かんだチャットに二宮和也の文字を見つけて私は驚きながら文字をなぞった。

『仕事が忙しくなりそうなので、お誘いできるのは少し先になるかもしれません』

そこにはそんな文言が書かれていて無意識に入れていた力が肩から抜けた。

私はチャットを開いて返事を打つ。

『奇遇ですね、実はこちらも新しい仕事が始まりまして、落ち着くまで時間取りづらいかもしれません』

そう返事をして画面を消す。

タイミングが悪かったなぁと思う。

「二宮さんとはご縁がないのかな…」

無意識につぶやいた言葉は自分で思っていたよりもずっと残念そうな声だった。

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