29−不機嫌な王子 ページ29
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_皆めいめいに豪華に着飾った舞踏会。
ゴージャスなシャンデリアを天井に掲げて、宮殿の大広間では紳士淑女がここぞとばかりに密集して豪華な衣装を身にまとっている。
そして大広間の2階部分にあたる玉座では不愛想な表情で国民を見下ろす銀髪の青年が足を組んでふんぞり返っていた。
「オイオイ王子様よォ、この2週間で折角貴族のレッスン受けてんだからちっとはマナーよくそれなりに座れ」
「…るせェ、別に誰も見てねェだろォがよ」
「喋り方も散々お目付け役から注意されただろ、お坊ちゃん」
「天元、テメェよっぽど左遷されたいみてェだな」
隣に立つ人物を、青年は不機嫌そうに頬杖付きながら睨み上げる。
青い軍服に白の乗馬スパッツ、膝下まである黒いブーツ。
そんな服装の男は、天元、とそう呼ばれた。
「_誰を探してる?」
「…誰も」
一人ひとりの淑女達が臣下によって名前を呼ばれ、玉座に居る青年に挨拶をしている中、当の本人はただの一人も興味を示さない。
むしろ淑女達が挨拶するのを見て、毎度落胆しているようにも見える。
分かりきったような表情で、隣の天元は腰かける青年を見下ろした。
「森で出会った娘か?」
「……」
「たった数回出会っただけだろ?」
「……そうだな。たった、それだけだ」
この王子_ご存じの通り行方不明だったわけだが、2週間前大怪我を負って西の森に倒れていたのを発見されたばかりである。
保護された直後は誰とも口をきかず物も食わず、怪我の治療もさせてくれずと大変だったのだが、二人の騎士が登場したことによってこの男は漸く大人しくなったのだ。
_そして言わずもがな、その二人の騎士のうち、一人はこの男、天元ナイトである。
「そんな森に一人で来るような女が舞踏会に来るかねー」
「何の為に俺が国民全員を招待したと思ってやがる
……来なきゃ迎えにいくだけだァ」
「家も知らねぇのに?」
「西に居ることは確かだ」
「ふは、城下町にも住んでない田舎娘のどこに惹かれたんだか」
「お前にアイツの魅力なんざ一ミリも教える気にはならねェが…お前にとりわけアピールするってんなら……特別美人だ」
「そりゃあそそるねぇ」
何せ天元という騎士は大の美人好きだから。
そして王子のその一言だけで、田舎娘だと笑っていた男が身を乗り出した。
それはそれで嫌なようで、王子の機嫌は尚更悪くなる。
「_王子」
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時