19−漆黒に ページ19
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そして次の日。
_仕事をこなしながら熱心に編み物を繕う彼女の姿に姉達は「また変な事してる」なんて罵倒したが、彼女はそれすらも耳に入っていない様子でひたすらマフラーを編み続けた。
寝る間や食事の時間すらも惜しんで1日がかりで完成させた手編みの白のマフラー。
編み物が得意なAであるから成し遂げられたものであり、普通ならこんなに迅速に作りあげられる代物ではない。
「…出来た…!」
あとはこれをラッピングして彼に手渡すだけ。
見るとあと半刻で日付が変わろうとしていて、急いで箱に包んで屋敷を出た。
彼に気づかれないようにそっと納屋へ向かう。
もしかしたらもう彼は寝ているかもしれない。
そんな不安も持ち合わせながらも、彼女の胸はどきどき弾んでいた。
「……あれ…? 納屋の電気が、消えてる…」
近づくにつれてその納屋からいつも漏れる灯りが消えている事に気付いた。
寝るときでさえ消さなかったランタンが消えている。
たったそれだけの事だが、彼女をざわつかせるのには十分であった。
落ち着かない心持ちで納屋へと近づく。
するとその時、納屋の中から物音が鳴った。
_ガタガタッ!
「…!」
もしかして実弥オオカミがまたお腹を空かせているんじゃ。
食べ物が無くて暴れているんじゃ。
…それとも何か別の…。
「実弥…!」
サプライズなんて関係無くなってAは納屋の中に足を突っ込んだ。
そして彼の名前を呼んだ時、予想もしていなかった光景に目を瞬かせる。
「……誰だ、お前?」
そこには見知らぬ男がいた。
目出し帽を被り、右手にはナイフを持った、サンキュロットの姿。
その男は納屋にある干魚や食べ物を袋に詰めていたのだ。
_驚愕に、大事に箱詰めをしたマフラーをぼとり、手から滑り落とす。
不幸中の幸いなのか、彼の姿は見当たらなかった。
「…一体、何を…」
「何って、食料を袋詰めしてんだよ。
家の食料が尽きたからな。そんで森に食料調達に来たらこんなボロ小屋に良いモンが置いてあったんでな」
「ここはあなたの納屋なの?」
「ちげえよ。だけどこんな所誰も使ってる奴なんざいねぇだろ?」
最初は恐怖が占めていたものの、徐々に落ち着きを取り戻した彼女はその見知らぬ男に質疑を続ける。
「もう少しでここの森も宮殿の連中が調査しに来るからな
その前にめぼしいモンはとっとかねぇと」
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時