13−月影の森 ページ13
.
朝から晩まで仕事ばかり。
洗濯に夕食に洗い物。それに姉様達の部屋のお掃除。
屋根裏部屋は息が凍る程寒い。
だからこうして、眠れない日は暖炉の温かい燃えかすの側で眠る。
「…みんな、元気かな」
真丸なお月様が今日はとても綺麗。
屋敷が寝静まるこの時間は、お母様達を思い出してとても恋しくなる。
最後の洗い物を済ませてネズミ達におやすみの挨拶をしてから、私は森へと足を踏み出した。
昼間に会いに来れないのが残念。
今日は遅いからもうみんな寝てしまってるわ。
「…会いたかったな」
ーー不意に、風が吹いて大きな陰樹が揺れた。
その時獣の香りと息を飲むような音が聞こえる。
「ーー…お前、」
「……実弥?」
振り返ると実弥がいた。
私を真っ直ぐ捉えて驚いた様に見開かれた瞳。
実弥、起きていたんだ。嬉しい。
実弥の方も懸命に尻尾を振っているのが見えた。
「もう会えねェと…思ってた」
「そんな事ない! いつでも会えるよ」
「けど、こんな日にちあいたじゃねェか」
もしかしなくても、彼は私をずっと待ってくれていたんだろうか。
この前会った時には警戒されるようにじっと目を見つめられていたのに、今日は目を伏せてゆっくりと私に近づいてくる実弥。
動かずに実弥が来るのを待っていると、そのまま私の腰元に頬をすり寄せてきた。
「実弥、寂しかったの? ごめんね」
「…そう思うなら、もっと会いに来やがれ」
「うん。そうする」
きっと一人ぼっちの実弥は私しか居ないんだ。
ただそれだけの事だけど、これまでの仕事の辛さが溶けるように無くなっていく。
すると実弥の垂れていた耳がピンと立って、瞳孔を開いて私を見遣る。
「…お前、腹減ってんのか?」
「…えっ」
「今腹鳴ったぞォ」
「…ええと、うん。少しだけ。でも平気だよ」
「…こっち来い」
お腹の音を聞かれたなんて、恥ずかしいな。
だけど実弥は気にしていない様子でその逞ましい四肢を動かして歩き出す。
困惑して動けずに居ると、もう一度戻ってきた実弥が後ろ足を器用に折り曲げて私に背を向けた。
「ホラ、疲れてんなら乗れ」
「え! い、良いよ。大丈夫だから!」
「お前を乗せて走った方が早ェんだよ」
そんな…私が乗っても平気なのかな?
柔らかそうな毛にそっと跨るとぐわっと高くなる目線。
初めて触れた実弥はもふもふしていて気持ちが良かった。
.
600人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時