11−朝の憂鬱 ページ11
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_奥様は、倹約の為に使用人を首にした。
その代わりに、日常生活で使用人達がやっていた事は全て私がする事に…。
「_悲しみを忘れるのに、仕事は丁度良いわ」
そんな誘い文句で私は朝から晩までずっと働き続けた。
悲しみを思い出にするために。
…お父様が帰ってくるまでの約束だった屋根裏部屋は、もうお父様は帰ってくることはないという理由で、私はずっとあの部屋に住む事になってしまった。
そして、哀しくても、辛くても、どんな時でも朝は来る。
『A、朝だよ! 朝だよ!』
「…うう…もう、折角素敵な夢を見ていたのに」
『どんな夢?』
「知ってる? 願い事は教えると効果が無くなっちゃうのよ」
父が亡くなって数日…。
今日も王都の時計の鐘は大きな音で朝を告げる。
王都は素敵…。みんな華々しくて、活気がある。
今日は王都に食材を調達する日だ。
それに王都に戻ったしのぶとも、久々に会える。
「…いけない、朝食の準備をしなくちゃ」
感傷的になっている時間すら惜しい。
怠けていたらまた姉様や奥様に怒られてしまう。
急いで支度をして朝の準備を始める。
_家畜に餌やりをして暖炉に火を起こして、屋敷の前の掃除をして朝食を作って、それから…。
「テオドラ。テオドラ姉様、朝よ」
「ううっ…カーテンを開けないでよ」
テオドラは朝が弱い。
カーテンをさっと引いてベッドへ近づくと嫌な顔した姉様がむすっと起き上がって私にドレスの山を押し付ける。
「これをアイロンにかけて! 一時間以内よ」
「はい、姉様」
次はエルフリーデ。しきりにベルで私を呼んでいたから、恐らくもう起きてる。
案の定、扉の奥から「A!」と寝起きだとは思えない声で私を呼んでいた。
「おはようエルフリーデ姉様、よく眠れた?」
「ほっといてよ。それ全部繕って。他の用事もあるから早くね」
「はい、必ず」
そして彼女からも洋服の入ったカゴを渡される。
もう既に両手は塞がってしまった。
最後は奥様だわ。彼女は朝が早いからもう起きてる筈。
控えめにノックすると、「朝食の準備は出来たの」と厳格な声が聞こえた。
「もう少しで出来ます。スープが冷めない内にどうぞ」
「ああ、A。洗濯物を持って行きなさい」
「はい、奥様」
彼女に言われた通り洗濯物を手に取り部屋を出る。
洗濯室へ洋服を置きに行って、その膨大さにため息が漏れた。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時