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島のお医者さんになったよ。 ページ1
古い木板の青いベンチ。
座ると日焼けしてカピカピになったペンキが白衣について厄介だが、その感覚も厄介さも全部含めて好きだった。
背もたれに背中をついて、海を一望できる高台からぼーっと水平線を見る。
穏やかな波と風は私に何も置いていかないけれど、何か平穏な心をもらえたような気がして実に心地がいい。
少し耳をすませば、風が草木を揺らす音や、波打ち際の音などが聞こえてきて、夏のこの島の美しさを物語ってくれる。
深呼吸をして白衣を頭からかぶると、視界はちょうどいい明るさになる。
そしてそのままそっと目を閉じてこの島で過ごした幼い頃を思い出してみた。
虫取り網を持ってあの森を駆け抜け、海へと続く石階段を転げ落ちた日にはお母さんに連れられて病院に来た。
サンダルが壊れるくらい走って、歩き回って、泳いで、溺れて、何度か死にかけるくらいの事はあったけれど、それも全部この島ならではの体験で、今でも楽しかったのを覚えている。
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作者名：長官 | 作成日時：2020年5月3日 17時
