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それは僕たちだけだったのに ページ29

JK

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「おはようございます」

撮影現場の控え室の扉を開けると、いつものヘアメイクヌナたちが挨拶を返してくれる。キョロキョロと見渡しても、そこにはなぜかAヌナがいなかった。

体調でも崩したのだろうか。ヌナは社畜気質がすごいから、ありそうな話だ。


「Aオンニのこと探してる?」
「はい。ヘナヌナ何か知ってますか?」
「えっとね。オンニなんだけど、TXTと掛け持ちすることになったらしくて」
「……掛け持ち?」


ヘナヌナによると、Aヌナは雰囲気を穏やかにするのが上手だから、軽いメンタルケアも兼ねて弟グループと掛け持ちすることになったらしい。

確かにヌナは周りがよく見えていて、雰囲気の調整もうまい。
僕たちもそんなAヌナのお陰で心穏やかにいることができたのに。

弟たちは今デビューしたばかりで心も大変なんだと思う。かわいい弟だし、僕も彼らに成功して欲しい。でも。それでも、Aヌナだけは、


「……わかりました、ありがとうございます」


仕事に私欲を出すな。
頭の中でその言葉を何度も繰り返して、ぐっと顔を上げた。

そして飲み物でも買ってこようとドアをまた開けた時、目の前にAヌナが現れた。

あまりに予想外で目を擦ると、「化粧まだ……だよね。化粧崩れたかと思った」といつも通りのトーンでヌナが言うものだから、空いた口が塞がらなかった。


「ヌ、」
「ヌナ! 鍵落としましたよ! ジョングギヒョン、こんにちはっ」
「あ、こんにちは、」


ぱっと聞こえてきたその声は弟のもので、パタパタとヌナに駆け寄ると、鍵を彼女の手に渡した。目元のシャドウがきらめく。化粧終わりだろう。

なんとなく、Aヌナがしたんだろうなと思った。


「わ、ほんとだ私のだそれ。ごめんありがとう、……うん? ヨンジュン目擦った?」
「バレました?」
「こら。ちょっと直すからね」


さっと筆を出して目元のシャドウやコンシーラーを整えていく。細い親指がヨンジュンの目元に触れて、ヌナは「うん、いいね」と呟いてそっと手を離した。


「かっこいいよ」
「へへ、ヌナのおかげです」


ヌナからその言葉をもらうのは、僕たちだけの特権で、ファンデーションがよれた時「こらっ」て言いながらも優しい手つきで直してもらうのもそうで、


「……? ジョングク、どうしたの」
「いえ、」




お願いです。ヌナ、戻ってきて。

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めぐみ(プロフ) - はぁ………とため息が出るほど、ちょっと目の奥が熱くなるような感覚を知るほどに素敵な作品でした、ありがとうございます(;;)みんなすごく心が優しくて、読んでいて私も優しい気持ちになりました。もし番外編など、浮かびましたらその時をまた楽しみにしています! (2022年3月15日 19時) (レス) @page43 id: 70e57b3fd4 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - 好きー (2021年8月18日 8時) (レス) id: d47eb74ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - ひろさん» ありがとうございます! ラストはしりすぎたかな? とちょっと心配だったのでホッとしました( ˘ω˘ ) 続編は今のところ考えてないです( ; ; )すみません( ; ; ) 何か浮かべば番外編を書くかもなあというくらいで……コメントありがとうございました! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - じゅりさん» ありがとうございます! 私自身続編系???となってましたがなんとかおさまりまして……笑 次の作品はかわいい控えめかもしれませんが、がんばります! (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - ラストの展開、キュンキュンしながら読ませていただきました!面白かったです!続編楽しみに待ってますね! (2019年12月19日 18時) (レス) id: 099739feed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2019年12月8日 16時

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