もういらない ページ11
「テヒョンさん、」
荒い呼吸の中でその名前だけきちんと紡ぐことができた。
勢いまま電話をしても繋がらなくて、力なく腕をだらりと下ろす。
テヒョンさんに会いたくてたまらなかった。
慰めて欲しいとか抱きしめて欲しいとか、そういう具体的に会いたい理由なんてなかったけれど、言葉にできないこの感情を包み込んでくれるのはテヒョンさんだと確信していたから。
「っふ、ひぅ……」
泣きたくなかったのに、結局泣いてしまって。学校の近くの公園は人通りだってあるのに、みっともなくしゃがみ込んで嗚咽をもらしてしまう。
「Aちゃん?」
柔らかくてよく通る声に呼ばれ、きっとひどい顔をしているのに視線を向けてしまった。
「ホソクさん……?」
「わー、どうしたのそんなに泣いて。あああ拭わないで、タオル冷やしてくるからちょっと待ってな」
ゴシゴシと目元を荒く拭っていると、優しくその手を止められて、蛇口のあるところまで走っていく。
端の方にリスのアップリケがついた可愛らしいハンカチが渡されて、思わず「かわいい」と呟いてしまった。
「俺のヌナが、可愛いからつけてあげるとか言ってつけてくれたの。成人してる男なんだけど、いつまでも弟はかわいいもんらしいよ」
困っちゃうよねーとニコニコしながらお姉さんのことを話すホソクさんは、お姉さん思いで、お姉さんもきっと弟思いの方なんだろうなと思った。
「寒くない? 俺今からナムジュニの家に行くんだけど、一緒来る?」
ご飯作ってやんの、と持っていたスーパーのビニール袋をあげて首を傾けた。
テヒョンさんに会いたい。それは変わらない。けれど、さっき電話をしても繋がらなかった。そんなときにホソクさんに声をかけてもらって、今すごく心が軽い。
テヒョンさんがつないでくれた縁、だ。
「良いんですか?」
「うん、ちゃんと家まで送ってくから、お家の人にもそう言っておいて」
「ありがとうございます」
「うん、どういたしまして」
もう、いらない。
先生の隣にいたあの時間はもういらない。
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ちよ(プロフ) - mochiさん» お返事遅れてすみません!テヒョンさんの不思議な魅力はいつまでも青く綺麗なのだろうなと思って書きました。細々とですが執筆は続けたいです( ˘ω˘ )ありがとうございました! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
mochi(プロフ) - 今更ながらちよさんの小説を見つけ、読ませていただきました。私もこんな青春時代を過ごせる仲間が欲しかったなぁって思いましたし、テヒョンのかっこよさが私の心をキュンキュンさせてくれました。これからも素敵なお話書き続けて欲しいです。終わってさみしい。 (2020年11月15日 20時) (レス) id: 7aaaff3998 (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - あきさん» 尊い高校生の青春の日々は大事にしたいなあとしみじみと思いますね……( ˘ω˘ ) (2019年11月3日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - 青春したくなりました (2019年11月2日 0時) (レス) id: 93ffcf3bfd (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - BeBeさん» わあああコメントありがとうございます( ; ; )!!! 更新バシバシがんばります!! (2019年10月30日 14時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年10月18日 23時