先生の本気? ページ20
パン、とピストルが鳴った後は早くて、長めの髪をいつのまにかくくっていたテヒョンくんは、髪をぴょこぴょこさせながらも一位で2走目のジミンくんにバトンを渡していた。
そしてあっという間に先生チームもバトンを受け取っていき、ついにユンギ先生が走り出した。
「普段おじいちゃん走りなのに本気出したらちゃんと走れんじゃん!」
バシバシとジヒョに肩を叩かれながら、普段は絶対に見ることができないユンギ先生の姿を目に焼き付ける。
「先生ー! 頑張れー!」
声を張り上げてみると、一瞬目があって。「あ、届いた」と思うと叫びそうになって今度は私がジヒョの肩を叩いた。
アンカーは校長先生で、よろよろとコケてしまわないか心配だったが案外早かった。
「ねえ絶対ユンギ先生のファン増えたもうどうしよう」
「かもねえ」
「あ! もう! ほら! 話しかけられてる!」
ただでさえ叶わない恋で、先生にとってたくさんいる生徒のうちの1人にすぎないのだから、これ以上先生の目に映る生徒が増えるのは勘弁して欲しい。
悶々と考えていると、「あ、先生」とジヒョが言うから勢いよく振り返った。
「労いの言葉くれねえの?」
「先生! かっこよかったです! ほんとに、めちゃくちゃ!」
「おー。ありがとー」
クスクス笑いながらスポドリを飲む先生は、今だけ先生ぽくなくて。
もう少し年が近かったら、先輩後輩みたいな距離で勇気もたくさん出せたのかなと思ってしまった。
「Aの声が1番聞こえた。すげえでかかったから」
「クラスの応援1ミリもしないんですよA。先生ばっかり」
「ジ、ジヒョ! 確かにそうだけど!」
「応援してやれよ」
教員用テントでパイプ椅子に座って、扇風機の風を浴びながら手を振ってくれるんだろうな、まで想像してたのに、こうやって走るユンギ先生を見ることができて本当に得をした。体育祭万歳だ。
「じゃあ俺テント戻るから」
「えー、クラスのテント来ないんですか?」
「テントから這いずり出されそうだから嫌なんだよ。若い力怖いわ」
ああそうだ、と言葉を続けるから首をかしげると、すっとカメラを向けられた。
「ハイチーズ」
テンションの低いその合図と、乾いたシャッター音。「絶対変な顔してた!」と怒るジヒョに「かわいーかわいー」と適当にあしらうユンギ先生。
もう体育祭は充分だ。うん。もういい。あとはツーショットだけ。
「A次障害物だよ」
「嘘でしょ忘れてた」
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ちよ(プロフ) - 飴さん» ありがとうございます! 穏やかでほんわりした甘いお話にしたかったので嬉しいです( ; ; )! (2020年5月5日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - ぽかぽかして心あったまるお話でした! (2020年5月3日 9時) (レス) id: a89f62ee0c (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - 岩本菜那さん» 何か新しい妄想がパッと浮かんだらここに番外編書きにきますね( ˘ω˘ )! (2019年10月3日 13時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
岩本菜那(プロフ) - 続編凄い見たいです!! (2019年9月30日 16時) (レス) id: 60aae2806b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - いさなさん» ひょえー!!!! ありがとうございますー!!!! (2019年9月30日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年9月7日 20時