episode260 Side M ページ18
「自分の心に、正直に」
ぼろぼろ、と棘の抜け落ちた心の傷口を、自分を偽らない、本当の言葉が埋めていく。
長いトンネルを通り抜けた先みたいだ。
「俺がしたいのは……あの頃みたいなサッカーだ！熱くて、楽しくて、自由に戦えるサッカーだ……！」
あの時みたいなサッカーを。
いつか絶対、光と一緒に。
「一星くん」
「A」
受け取る相手の限界を探るような、気まぐれなパスを俺に渡すのと同時に、Aと幻の蝶々が俺の隣を走っていた。
緩く癖の混じった髪が、宙をふわりと舞い踊る。
今の俺とは恐らく真逆で、どこか昏い瞳が俺だけを見つめている。
でも、あの時の責めるような眼差しとは、少し違う。
……どことなく不満そう。
結局、Aの思った通りになってしまったといのに。
こいつは、それでもまだ足りないって言う訳？
「……何だよ。文句ある？どうせ俺は、卑しい裏切り者なんだから。都合の悪くなった向こうを、裏切ってやっただけだけど…！」
「ううん、文句はないよ。そうやって、君の本当の想いを聞けてよかった。でも」
Aの表情が、更に曇る。
相手選手の欠片程も隠そうとしない苛立ちが俺に向けられていたことに、いち早く気付いていたからだろう。
痛いほど分かってる。
光を助ける道が、俺達が愛したサッカーを貶めるような組織にしかなかったように。
光の手術を引き換えに提示された条件が、かつてのトラウマに鋭く爪を立てたように。
「君のこと、裏切り者なんかで終わらせたくない」
＿＿トンネルを抜けたすぐ先が明るいとは、限らないんだ。
「裏切り者め！チャンスはやった、お前は最後の選択を誤った！」
レッドホットチリ・メテオ。
突き抜ける青天を無惨に喰い千切るように、紅蓮の流星が
大丈夫、今ならかわせる。心が決まった今なら。
これからは、兄として光に誇れる姿でお前を守るから。
(だから、見ててくれ。光)
＿＿“兄ちゃん…”
俺は悩みを振り切って、こんなにも晴れ晴れとした気持ちなのに。
脳裏を過ぎった光は、どうしてそんな悲しそうな顔をしていたの。まるで、あの日から何も変わっていないじゃないか……
“俺のことはもういいんだ。……もう俺に、構わないで…！”
心の中には戸惑っている俺と、必死に叫ぶ俺がいる。
光の心が、自分の声のように脳に溶け込んで。
(俺は、俺は一体、誰なんだ……？)
「＿＿一星くん！」
＿＿その場で膝から崩れ落ちた俺に、手を伸ばしたのは。
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三峰 契(プロフ) - 琥珀恋歌さん» お返事お待たせしてしまい申し訳ありません…！現在本編に集中する為、スピンオフの方は更新をお休みさせて頂いております。更新再開時にまたパスワードを公開する予定です！ (2021年4月2日 23時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
琥珀恋歌(プロフ) - スピンオフのパスワード教えてください！ (2021年3月18日 13時) (レス) id: a29e155f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2021年2月27日 18時
