episode258 ページ16
「あそこでオーバーヘッドなんて、珍しいな？」
「野坂は本調子じゃないらしい。今頭に衝撃を受けると、サッカーが二度と出来なくなってしまうかもしれない」
「えっ、だからヘディングしなかったのか……！？」
よくそんな嘘を言うよ。手術後とは思えないくらい無駄に元気なくせに……と、内心独り言ちる。
風丸先輩と組んでいたと思ったら、今度は吹雪先輩に氷浦先輩。
誰彼構わず、とんだ人たらしだ。私には真似出来そうにない。
でも、それをあえて一星充くんに聞こえる場所で言わせたのは、そういう作戦ってこと？
向こうの方で、ぴくり、と一星くんの肩が揺れるのが見えた。
「Aも……！野坂から、聞いてたの？」
急に話を振られて、今度は私が肩を揺らす番。
焦る稲森先輩の後ろで氷浦先輩が、まずい、と目を開いた。
(まさか、自分を囮に使うつもりでこの作戦を組んだのかな)
あれだけ顔を合わせる機会があった私と口裏を合わせてくれなかった辺り、それで確定でいいだろう。
そして氷浦先輩は、悠馬のことなら何でも知っていそうな私に振られて慌てた、ということ。
「……そうですね、一応。無駄に利口な頭だけれど、今は刺激しないであげてください」
軽く芝居を打つ自分に、あいつの思うがままに動く自分に、嫌気が差す。
これはただ、氷浦先輩の協力を無駄にしたくなかっただけだ。それだけ。頭の中で言い訳を済ませて。
「そっか。うん、分かった、気をつける」
話を合わせてくれてありがとう、と手を合わせた氷浦先輩にアイコンタクトを送って、ふたりにも見えないように溜息をつく。
……意地でも我を通すつもりだ。
やっぱり自己犠牲は厭わないか。懲りない奴。
＿＿“あの人を亡くした時、僕達は一生分の後悔を使い切ってしまったはずだよ。だったらあとはもう、前に進むだけでしょ”。
(うん。そうだね、その通りだ、悠馬)
1度も後悔をせずに生きることなんて、人間には出来ない。
だったら、その後悔を繰り返さなければいい。
だからあいつは、未だに自己犠牲すら恐れないんだ。
自分に守れるものがあるのなら、悪役になることも躊躇わない。
「……いいよ。やってやろうじゃないか」
フィールドには、私を含めて22人の選手。
そのうち明確な悪意を向ける選手が11人、迷いを燻らせる選手が1人、その迷っている選手を試そうとしている生意気な選手が1人。
(誰に何を言われたって、後悔だけはしたくない)
全て吹っ切れたように、再びボールを追い始める。
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三峰 契(プロフ) - 琥珀恋歌さん» お返事お待たせしてしまい申し訳ありません…！現在本編に集中する為、スピンオフの方は更新をお休みさせて頂いております。更新再開時にまたパスワードを公開する予定です！ (2021年4月2日 23時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
琥珀恋歌(プロフ) - スピンオフのパスワード教えてください！ (2021年3月18日 13時) (レス) id: a29e155f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2021年2月27日 18時
