episode257 Side Y ページ15
「A」
Aから離れていく一星君を視界の端で見送って、そこに1人取り残されてぼんやりと立ち尽くすAの腕を引く。
振り向いたAは悔しそうに、じとりとした眼差しをそのまま此方へと向けた。
自分を呼んだのが僕だと分かった途端、面倒そうにそっぽを向こうとしたAを引き留めようと、態とらしく笑いかけてみる。
「あまり納得してなさそうだね。まだ一星君に言いたいこと、あったのかな」
ふい、と顔は背けられてしまったものの、きっとその表情は僕の言葉で、より曇ってしまったのだろう。
少年と少女の合間のような声。それは悲しくなるくらい、変声期前のあの人とよく似た声。
この時僕の胸は、ただただ痛く締め付けられていた。
「どれだけ言葉を重ねたって、どれだけ似た経験があったって、どうせ私はあの子にとって他人なんだって。……それを今になって、痛感しているところ。分かっていたつもりだけれど、まだ甘かった」
「奇遇だね。僕も、同じ経験があるよ」
「じゃあ、今の君なら分かる？由羽真くんを、どうやったら止められたか」
同じ経験、と言って、彼を指していたことにすぐ気付いたらしい。
ここで少しでも強がれたら良かったけど、僕は未だに答えには辿り着けていない。
「ううん、今も分からない。どれだけあの人を尊敬したって、分かった気になってたって……所詮は、他人だものね」
「……役立たず。そのくせ、揚げ足だけ取って」
不愉快そうにとげとげとした態度で、振り返ることもなく、フォワードの前線へと戻っていく。
その手を再び掴むよりもずっと早いと、強引に、矢継ぎ早に続けた。
「でも他人が介入出来ないって言うなら、他人じゃない誰かを交渉に引き込めば良いんじゃない？そうすれば、無下には出来なくなるでしょ」
ここでようやく、Aが此方を向いてくれる。
あれから少しずつ、怒りを隠すのが上手くなったような気がする。その祝福に満ちた色の瞳にだけ煙る熱を灯して、僕の元へとつかつか、駆け寄って。
「……平然とした顔で、よくそんな恐ろしいことが言えるね…！遠回しに、私がどうにかしていれば由羽真くんは助かった、って責めるつもり？」
「まさかね。でも、もう後悔はしちゃ駄目なんだ」
力の篭った肩を宥めるように手を置く。
Aは静かに、それに続くはずの言葉を噛み殺した。
「あの人を亡くした時、僕達は一生分の後悔を使い切ってしまったはずだよ。だったらあとはもう、前に進むだけでしょ」
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三峰 契(プロフ) - 琥珀恋歌さん» お返事お待たせしてしまい申し訳ありません…！現在本編に集中する為、スピンオフの方は更新をお休みさせて頂いております。更新再開時にまたパスワードを公開する予定です！ (2021年4月2日 23時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
琥珀恋歌(プロフ) - スピンオフのパスワード教えてください！ (2021年3月18日 13時) (レス) id: a29e155f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2021年2月27日 18時
