episode201 ページ8
「ありがとうございます、お見舞いなのに、裏口なんて使わせてもらって」
裏道から抜けて、偶然病院の裏側で会ったのは、この前一星光くんに伝言のメモを渡してくれた看護師さん。
何やら状況を察して、入院受付ではなく、“こっちからおいで、花綺更選手”と手招きをしてくれたのは、つい先程のこと。
「ううん。今は、あまり目立たない方がいいでしょう」
すれ違っていく医師や看護師さんは、私に構う隙なんかもなく早足。これが今までの空気観だったのに。
そうぼんやり考えながら、私も本来は此処にいるべきではない、と足音は立てないように意識しながらも歩みを早める。
「この前は、本当にごめんなさい。……試合、見せてもらったんだけれどね」
＿＿……前の試合で、怪我をして退場した者です。分かりますか。
＿＿ああ、あの時の！……大丈夫だった？
そんなやりとりも、怪我をした直後のこと。
日は空いていないのに、何だか随分遠い話のように感じる。
嫌な名の売れ方だと思っていたら、それを上回るというよりは、上書いていくような反応に、半分くらいはついていけない現状。
「テレビの前で、わぁって歓声をあげちゃった。すごくドキドキしたの」
……とはいえ、やっぱりこういう反応を見ると一々嬉しくなってしまう辺り、まだ私も子供だ。
褒められ慣れていないから、なかなかよく見ていたはずの悠馬の反応みたいには上手く流せない。
そのことを知られるのは恥ずかしい。
妙なプライドに邪魔をされて、わざとらしく深刻な表情を作ってみる。
「……あの。一星光くんって、重たい病気なんですか？」
手紙に面談時間が書いてあったけれど、一星充くんと会っている時間を考えても、あまりにも日時が限られていたこと。
半ばの意地で引っ張り出してきた問いは、途端に彼女の表情に影を落とす。
「光くんは、……」
私がたった今、和やかな空気を壊した。
そんな自覚も通り越して、言葉を継ぐ唇から一瞬さえも目が離せず、じっと押し黙る。
「
そんな確信はあったけれど、いざ向き合うとなると心臓がドクン、と嫌な風に打った。
でも一星くん達に何があっても、私のチームメイトであることには変わらないのだから。
「分かってあげてね、っていうのは難しいかもだけど。今日だけは、光くんの話し相手になってほしいな」
(……そう思える自信があるからこそ、こうして今日、一星光くんに会いに来たんだ)
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
