205 ディストピアは、片翼の ページ12
それはもう、この上なく意地悪な質問だったと思う。
けれど、これが私の出来る限りのSOS。
「君のお兄さんは、決して悪いひとじゃないよ。自分の心を偽って、悪であろうとしたがるんだ」
ひとりの人間としては、確かに褒められたものではない、けれど。
弟を守りたい兄としては、私にとってはそう簡単に責められない行為だ。
君のお兄さんと同じことをしたひとを、私は知っている。
「オリオン財団という、ロシアの組織＿＿一星光くんも、ロシアにいたのなら知っているかな。そこからの指示で、試合状況や、チーム内部そのものを乱している」
爪を立てて、キン、とガラスを叩く。
「想像はできなくもないでしょ。きっと何らかのリターンがある。……あの子が守ろうとしているもの。それは、今の君のことなんじゃないかな」
あの子と同じ顔から血の気が引いていく。
尋常ではない罪悪感。けれどそれすらも上回る責任感に、私の口は冷酷にもよく回る。
「知らなかった、そんなの……じゃあ、兄ちゃんが元気ないのって」
「さて、ここで話を戻そうか。一星充くんが君の為にこういったことをしているという訳だけれど、当事者である一星光くんは」
互いに、今更言い逃れなんて許されない。
まるで監視し合うかのように、視線は逸らさず、固く結んだまま。
「……お兄さんのこと、どう思った？」
確信が無かった、なんてことはない。
ただ、苦しませる自覚があったから。
ただ、確かに苦しんだ過去があったから。
ここに来るまでで固めていたはずの覚悟が、途端に弱ってしまいそうになる。
「……ずるいですよ、そんな言い方。俺はどう言えばいいんですか。貴方のチームの皆さんの為に、兄ちゃんを絶対に許すなってことですか……」
「じゃあ君はこの話を聞いても、お兄さんのことを責めたくないんだ」
態とらしく淡々と呟けば、一星光くんの顔は今にも泣き出しそうに歪む。
強く握り込んだ掌が、ベッドシーツに深く皺を走らせるのを横目に、震えた声を紡ぐ口元ばかりに注目していた。
「だって、たったひとりの家族、たったひとりの兄ちゃんなんです。悪いことは分かってる、でもそんな簡単に嫌いになんてなれない」
許されることじゃない。
でも、絶対に嫌いにはなれなくて、なりたくなくて。
(私も、そうだったんだよ)
「世界にたったひとりだけの、大切な兄さんだもの。どんなことがあったとしても
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
