episode67 ページ20
窓から射し込む夕陽の光が、弾かれたように大きく見開いた瞼からちりちりと瞳孔をくすぐった。
夕方、ということは少なくともあの試合から丸1日は眠り続けていたことになる。
長時間にわたる睡眠のせいで頭が重たい。
少しでも血を巡らせる為にもゆっくり立ち上がる。
(……あれ？)
そこでスタンドに立て掛けられたタブレットに、普段は夜間しか使用しないはずの充電コードが繋がっていることに気が付く。
夕陽の中に僅かにブルーライトが混じっているのが見えて、ちょうど部屋の入口に向かった画面を此方に向けた。
するとタブレットの画面には文庫本を手にする悠馬が映っていて、彼は私の視線に気付くなり本を閉じて”A”と囁くような声で私の名前を呼ぶ。
『……おはよう、A』
「私、何日眠ってた？これ、ずっと起動していたって訳じゃないよね」
『1日しか経ってないよ。西蔭にずっと見ていてもらうのも悪いし、こうして練習で君を1人にする時間のだけ繋いで貰ってたんだ』
「気分としてはあんまり良くないかな」
タブレットの角度としては部屋の入口を映していたように見えたから、多分私は映っていない。
鍵が掛けられないこともあり、私が眠っている間の見張りをしてくれていたらしい。一切納得できない訳でもない。
それでも少し文句を言おうと眉を寄せたところで、悠馬は私が口を開くよりも先に深刻そうに眉根を寄せた上で話し始めた。
『一星君、試合後に思った以上に大きく動いたみたい。そんな中で抵抗もできない状態のAを部屋で1人には出来ないから』
抵抗もできない。
眠っていた状態を随分と物騒なように言い表されて、どうにも一星充くんが起こした行動は只事じゃなかったんだろうと察する。
「じゃあそんな状況で眠りこけてたんだ、私って」
自嘲を込めて呟いた、私以外が傷付く理由も無いはずの独り言。
それなのに何故か、悠馬まで傷付けられてしまったかのように僅かに俯く。
「……どうしたの」
『本当は、何よりも君に”ごめんね”って言いたい。でもきっと、君は望まないだろうから』
そう言ったほんの一瞬だけ、いつもは余裕ありげな目が悲しそうに揺れた気がした。
それが気になって仕方なってどうにかその心を覗こうとじっと目を凝らしていたのに、気付けばすぐに見慣れた無機質な微笑みに戻ってしまう。
『それなら君以外の人間にどれだけ冷酷だと言われたって、僕はAに”よく頑張ったね”って言うよ』
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» はじめまして、コメントありがとうございます！のんびりですがこれからも更新頑張りますので、よろしくお願いします！ (2020年3月10日 21時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続きが気になり過ぎて待ちどうしいです。これからも頑張ってください。 (2020年3月10日 15時) (レス) id: b69d3c39c6 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭〜すずらん〜(プロフ) - 始めまして。麗乙女のゆううつのパスワードを教えてもらいたいです！ (2020年2月3日 16時) (レス) id: b5347077cc (このIDを非表示/違反報告)
契(プロフ) - 匿名さん» 初めまして。展開は決まっているのですが、野坂さんと花綺更ちゃん、頭脳派という設定の 2名のやりとりをどのようにまとめるかで長く手こずってしまい…！なので体調は万全です！ご心配お掛けして申し訳ありません。これからも楽しんで頂ける作品を目指して頑張ります！ (2019年12月10日 0時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 初めまして。以前から楽しく拝見させていただいております。しばらく更新が無かったので体調を崩されているのかと心配しておりました…。花綺更さんと野坂さんの今後をハラハラかつワクワクと今後も楽しみにしております…！ (2019年12月8日 5時) (レス) id: dfef9e7ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2019年10月6日 8時
