44話 月宮リンは強くなるために ページ3
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「召喚、オウレイ。」
杖をふれば、浮かぶ水。
その中から出てきたのは美しき龍。
主である私に首を下げ、こちらを見た瞳は
金色が光っていた。
「オウレイ、今日も連れてってくれない？」
「主、今日も、なのか？流石に、毎日は体を壊す。」
「分かってる。でも
リスク無しに癒やしの術を使えるのは私だけだよ。」
「…………無理だけは、するな。」
そう言って体を寄せてきた彼の鱗を撫でる。
「ありがとう。」
ふわりと白いヴェールをかぶる。
少し透けて見える視界はいつもより狭い。
でも、これくらいは分かる。
「………オウレイ、飛んで。目的地とは反対の方角に。」
「御意。」
龍の背中に乗り、かける空に星が瞬いた。
オウレイは、体長はとても大きいが
流れ星のように速い。
私の姿が知りたいなら、追いかけるではなく
待ち伏せするはず。
私の、進んだ方向には
あの変な石しか無いんだから。
そこしか行く場所がないもの。
だから
「ある程度の距離を進んだら、ガルドラブルを発動して
空間を掌握する。瞬間移動して目的地まで飛ぶから
時空の歪みに注意して。」
「はあ………。無理はするなと言ったはずなんだがなぁ！！」
上がるスピードに振り落とされないようにしながら
ネックレスを投げる。
この前、怒りの感情に任せて手に入れた
私の力。
引き出せるかはわからないけど
「(ガルドラブル！！！！！)」
杖で円を描き、その中をくぐれば
景色が一瞬にして変わった。
………姿は変わらなかったけど。
どうやら、心のなかで完全詠唱をちゃんとやらないと
力があまり出ないらしい。
「やっぱり、練習が必要だね。」
「………まあ、あれは妖術だ。
妖力をあまり使わずに使えるようになってきたら
存在が怨霊にどんどん近づいていってる証拠だ。
我の力を無理に体に詰め込んでいるんだ。
気をつけたほうがいい。」
上空から降りる時にオウレイが発した言葉に
私は頷くしかなかった。
だって、怨霊だけじゃない。
YSPの強さまで見えるようになってる。
それは、分かってる。
人間じゃなくなってきてるのが、実感できている。
でも
「強くならなきゃいけないから。ごめんね。」
目の前に佇む神社を前に私は両手をかざした。
闇に飲み込まれ私は消えた。
その後、私は暫く皆の元へ戻らなかった。
戻れなかった。
強くなるために。
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作者名：YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2022年8月17日 18時
