教科書 ページ16
「…あ、えっと…。」
気まずくて1人あたふたしていると
「ハハッ、ごめんごめん。
昨日のこと思い出してた。」
「あ…昨日もすみませんでした。
ボーッと歩いてたせいで…。」
さっきの教室での少し驚いた様子は
私だって気づいたからなのか。
と思っていると
「いや、俺のほうこそごめんね？
朝礼遅れそうで焦って走ってさ、
廊下は走るもんじゃないって言ってる
立場の人間が何してんだってね。」
申し訳なさそうに本当に怪我しなかった？
なんて言ってくれる先生は女子にモテる訳だ。
「あ、それ返しにきてくれたんだよね？」
そう言って私の腕の中の教科書を指差してる。
「はい、返しそびれちゃって…
ありがとうございました。」
「あー、全然。あいつらから逃げるの必死で
俺も忘れてた。」
眉間にしわを寄せながら嫌そうに言う。
(へぇー、先生ってこんな顔もするんだ。)
爽やかな笑顔のイメージの強い先生が爽やかとは
対照的な表情をするものだからそう思ってると、
「その教科書あげるよ。」
先生がそう言った。
「え？でも…」
本当にいいのかな、なんて思っていたら、
「まだ教科書買えてないんでしょ？
もう一冊持ってるから、それ使っていいよ。」
ポイントに線引いてるからテストの時ラッキーだね
って笑ってる先生を見てると違和感を感じた。
私の中で何かの蓋が開きそうな、そんな感じ。
「…ありがとうございます。
大事に使いますね！」
「ハハッ、大袈裟。
じゃ、気をつけて帰ってね。」
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作者名：cherrys | 作成日時：2020年12月31日 2時
