「恋」っていうから「愛」に来た【鬼滅の刃】

続き ページ23

「簪をいただいたの！？」

『そうよ！』

「それって…ちょっとは好かれてるってことだよね！」

『多分！』

椿さん、残念ながら簪を送る意味を知らない！

美しい二人に沢山の視線が注がれた

どうやって話かけようか、

どうやって気をひこうか。

あちらこちらで緊急会議が行われていた

そんな時、ふと甘い香りがしたものだから

二人は誘われるようにして足を運んだ

カフェで食事をしていたひとびとは

眼福であった二人が去ってしまって

ガックリと肩を落とすのである

『この匂いは飴細工だったのね』

「綺麗だね」

琥珀の輝きが職人の手によって生み出された

ふわ、と心をくすぐる美しさに二人とも頰を緩ますのである

作業をしていた職人達も

二人の顔を見て金魚よりも真っ赤な顔を作るのである

「可愛い嬢ちゃん達にはサービスしよっかな」

『まぁ！太っ腹ですね！』

「そういうお方は大好きです！」

一人、気前のいい玄人が声をかけた

軽率に好き、といってしまうのは

二人の可愛らしくて意地悪な癖である

するとそれをからきりに

色んな人が彼女たちにアピールするのである

その美貌に見惚れて。

お近づきになりたいという欲望を込めて。

いい着物を着てんな！と呼ばれれば

ありがとうございます！と、

旦那さんもとてもお洒落でいらっしゃると。

そして最後に

お洒落なお方は素敵で好きですわ。と

最高の殺し文句を添えるのである

この殺し文句、お嬢様のお母様が仕込んだ。

ナイスお母様である

力強いお方は好きです

気前のいいお方は心を撃たれます

素敵な旦那様でございますね

それを聞いて

みっともなく鼻を伸ばす男達は

もはや清々しいものである

ふんわりと浮かべられる笑顔は一騎当千のものだ

その姿を良しとしない影が二つ。

負のオーラを撒き散らしている

時透「僕も、こんぐらいできるよ？」

「そうなんですね！」

時透「……」

「……？」

人の渦をかき分けて、ついでに鼻の下を伸ばす男も跳ね除けて

椿さんの前に立ったのは時透無一郎である

心底、楽しくないという顔をしていて

私、そこまで嫌われてるの！？と

椿さんの心は荒れていたが逆である

しかし、この無一郎は無自覚である

急に接近した無一郎の顔に

ワ、と驚くが早いか。顔を真っ赤にさせてあたふたしてしまう

うん、今日も幼馴染が可愛い！と

お嬢様はうなづくのである

無一郎は褒められたい。だけなのだが

善逸の言葉を切実に二人は信じているのである

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