本気ではら .ましてやる。【鬼滅の刃】

時透夫人が頑張る話 ページ43

これは今より少し、前の話

『…今日は大丈夫』

朝風が冷たかった

竹の中を吹き抜けてくる猛者たちだ

容赦なく髪を乱していくし

慈悲もなく体温を奪っていく

思わず身震いしてしまうような朝である

まだ寝息をたてて寝ている絶賛片思い中の無一郎を見て

少し安心したように息をついた彼女。

実は置いていかれることが多いので

こうやって毎朝早くに頑張って起きる。

まだ、寒いだろうに自分の毛布を無一郎にかけた

無一郎は決して彼女を待ってはくれない

待つどころか、置いていくし

なんなら離してくる

そんなに嫌なのか。嫌なんだろうな。と

悲しそうに彼女は肩を落とした

時透「…なにしてるの」

『お、おはようございます』

時透「…」

相変わらず返事はない

勝手に後ろについてくるストーカーだとでも思っているんだろうと

彼女は思い、長い恋路を見て途方にくれた

時透「羽織りとかいらないから」

『気遣わなくても大丈夫ですよ』

寒いだろうと思ってくれたのだろうか

赤くなった指を温める彼女に無一郎が羽織をかけた

思わずきゅっと胸がなる

時透「君の羽織りとか嫌なんだけど」

『ですよね…』

その後にパリーーンッと爽快な音を立てて心が割れた

思わず涙ぐんでしまう一言だ

きっと鼻声になっていたに違いない

つんと鼻に来たのはきっと寒さのせいだ

悲しいとか、泣き出したいとか、そういうものではない

彼女が頑張ることは空回りばかりした

羽織をかけても嫌がられた

ご飯を作ったら食べて貰えずに腐ってしまった

手当をしようとしたら下手くそだと怒られた

その度に思わず涙が溢れてしまう

でも、見られたら絶対に置いていかれるので

見られないところで泣いている

そんな彼女は実は本当はいいところ育ち

野宿なんてしたことないし

周りの世話も全て家政婦がしてくれた

夜も怖いし、相変わらず塩対応だし…。

帰りたいと思ったし

なんでこんな男が好きなんだろうと思った

諦めたかったことも何回だってある

でも

『…かっこいいなぁ』

諦めきれなかったのが事実。

隣にいるだけで胸が痛い

上手く話せなくなってしまう

少し足が震える

例え、酷いことを言われてもすぐに心臓はうるさくなる

時透「なにいきなり。気持ち悪い」

そしてその後にすぐまた割れるのだが。

彼女の恋路は辛いものである

おまけに痛くて、ツンツンする

でも、引き返せるものでもなかった

今日も今日とて心の中で泣きながら

未来の奥さんは頑張るのだ

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