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第三一話「全ては思惑通り」 ページ32

走るたび泥が跳ね、着物を汚す。泥濘んだ泥が足元をすくい、転けそうになるのをなんとか持ちこたえ、走る。お店に傘を忘れてしまった。けれど、貴方をこれ以上待たせてはいけない。

「…宇髄さん」

柳の下、彼はいた。びしょ濡れで。銀色に輝く髪が、雨に濡れてより綺麗だった。私がポツリと名前を呼べば、宇髄さんは気がつき私の顔を見て微笑んだ。ゆっくりと柳の下へ歩む。

「やっぱり来たか」

「…」

宇髄さんは、私が来る事を予想していたみたい。安心したかのように、少年のような笑みで私を見つめるのだ。

「…私は、逢えないと…」

「でも逢えたじゃねえか」

私はそれを聞いて騙しましたね、と言った。宇髄さんは困ったかのように笑うとすまねえとだけ答えた。

「…お前の姐さんからは話は聞いた。酷い目にあったな。俺がその場にいてやれなくて…ごめんな」

「!…いいえ、宇髄さんは何も悪くありません」

私はその言葉に首を横に降る。宇髄さんが悪いだなんて、誰が思うのだろう。悪いのは私だ。抵抗もできず声にも出せなかった私が、悪いのだ。宇髄さんは私に差し伸ばした手を、思い留まったかのように、わたしには触れなかった。

「…お前、好いてる男がいると言ったな」

「!…はい」

急にその話をふられて少し困ったけれど、私はコクリと頷く。宇髄さんはどこか無表情で、雨に濡れ張り付いた髪の毛がより一層色男を引き立てさせた。

「俺はその男に会った、お前のことも話した」

「!」

私はそれを聞いて驚いた。会った?私の…好きな人に?あれは咄嗟に吐いた嘘だ。それなのに宇髄さんは会ったと言ったのだ。私はまさかと思い自分の頬の傷に触れた。錆兎だ。錆兎が、私が生きてる事を知っている。そう思うと雨ではないものが頬をたりと流れる。まさか錆兎と宇髄さんが出会ってそんな話をしてるなんて。

「今あいつは血眼でお前を探している。お前はあいつに会いたくはないのだろう」

宇髄さんは全て見透かしている。私が錆兎に会いたくないことも。宇髄さん、貴方は思ってたより聡明なのですね。観念しました。


「俺を好きにならなくともいい。だがあいつに会いたくないのならば、俺と来い。」


貴方は、私を捕らえるのがお上手ね。

第三二話「表面上」→←第三十話「決意」



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❤︎ - 面白かったです〜!!!最後には少しうるっときました…笑もう3年も更新されていない事に驚きです。続きが気になる〜〜!!何年でも待つのでまた更新してくれたら私含め読者達ありがたいです!待ってますね。 (8月24日 21時) (レス) @page41 id: f6dfc22ed3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!!!!!!!! (2022年3月22日 22時) (レス) @page41 id: 4673827fe0 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 続き!続きはどこ?!ねぇ?!((やかましい (2022年2月26日 21時) (レス) @page41 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
とうめい - 終わっちゃった〜…続きが気になります…更新待ってます!! (2021年10月3日 12時) (レス) @page41 id: 4fdb593f0d (このIDを非表示/違反報告)
りあむ(プロフ) - 終わり!?更新待ってます、、、 (2021年10月2日 20時) (レス) @page41 id: 5dcfb8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜餅 | 作成日時:2019年11月17日 20時

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