第二六話「お酌」 ページ27
怖かったお酌もだいぶ慣れ始めた。触られそうになったら、姐さんが柔く断りお客の相手をしてくれた。私はお酌だけ。身体を許したわけではない。
「ごめんねAちゃん、新しい人が来るまでの辛抱だから」
「いいえ、大丈夫ですよ…」
姐さんが私の唇に紅を塗りながら答えた。私は苦笑いして首を横に降る。確かに怖いけれど、姐さんの役に立たないと。綺麗な着物に召して、髪をやってもらえば、鏡を見る。まるで知らない人に見える。
「今日のお客さん、人がいいから心配しないで」
姐さんは元気づけるように私の肩をポンっと叩いてくれた。私はそれに微笑む。姐さんがそう言うなら大丈夫。このボロボロの身体で、役に立つのなら。
「姐さん、お客さん来たよ」
「え!もう?」
すると禿が部屋を開けてそう言った。お客さんが来るのはもっと後のはずだ。姐さんは先に私の準備をしてくれるため、姐さんはまだ紅も塗っていなかった。困ったわねえと頭を抱える姐さん。私はそんな姐さんに声をかけた。
「…姐さんは支度してきてください。私がそれまで相手をするので」
「!…でも、危ないわよ。もし無理やり…」
私はそこまで聞いて笑う。確かに私は右腕が使えない。もしされそうになったら男の人の力には敵わないかもしれない。でも姐さんが言ってた。その人、いい人なんでしょう、姐さんが言うくらいだから。
「私は大丈夫ですよ」
「…ごめんねえ。すぐ支度するから」
姐さんは眉を寄せて私の手をギュッと握りしめた。私はそんな姐さんに微笑んで立ち上がって、その手をゆっくり離す。姐さんは名残惜しそうに最後までしっかり握ってくれた。私は、待ってますと声をかけて部屋を出る。禿に案内されてその部屋へと行く。
姐さんが教えてくれた。部屋へ入る時は頭を下げて声をかける。
「お待たせしました。お菊の妹分、牡丹です」
私は返事が聞こえるまで頭を下げたままだった。だけれどすぐに優しそうな声が聞こえた。どうぞお入り、と声が聞こえてきた。私はその言葉に失礼しますと襖を開けた。
3466人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
❤︎ - 面白かったです〜!!!最後には少しうるっときました…笑もう3年も更新されていない事に驚きです。続きが気になる〜〜!!何年でも待つのでまた更新してくれたら私含め読者達ありがたいです!待ってますね。 (8月24日 21時) (レス) @page41 id: f6dfc22ed3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!!!!!!!! (2022年3月22日 22時) (レス) @page41 id: 4673827fe0 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 続き!続きはどこ?!ねぇ?!((やかましい (2022年2月26日 21時) (レス) @page41 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
とうめい - 終わっちゃった〜…続きが気になります…更新待ってます!! (2021年10月3日 12時) (レス) @page41 id: 4fdb593f0d (このIDを非表示/違反報告)
りあむ(プロフ) - 終わり!?更新待ってます、、、 (2021年10月2日 20時) (レス) @page41 id: 5dcfb8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜餅 | 作成日時:2019年11月17日 20時