第二二話「遊女擬き」 ページ23
「私が…ですか?」
「うんそうなの、出来る?」
私は特に変わったこともなく、いつも通り過ごしていた。洗濯をして食卓を作って姐さんの髪の毛を櫛で梳かしている時だ。姐さんが困ったように眉を寄せて私に頼みごとをした。
「でも…私この傷が」
「大丈夫、白粉で隠すから!お酌だけでいいの。お願いAちゃん!」
そう、客のお酌だ。なんでも人手が足らなくなってきてるらしい。店が人気なのは嬉しいが、遊女の数は限られている。だから姐さんは私にお酌だけでも頼んできたんだ。私の右肩には傷痕が残っている。それに右腕も動かないのだ。そんな中私がお客の相手を取れるのだろうか。でも今姐さんは困っている。私は言った。姐さんへ恩返しがしたいのだと。
ならば…
「姐さんの頼みなら」
「本当?」
断れるわけないじゃないか。それにお酌だけなら何も問題ない。この身体を晒せば客足はきっと途絶える。このお店に悪影響だろうと思っていたけれど。表に立つことを許された気がした。
「あれ?あの色男はいいの?」
「え?」
すると隣でお菓子を頬張っていた禿がそう言った。色男?…ああ、宇髄さんのことだ。私は禿のその言葉にいーの、と笑った。宇髄さんには申し訳ないけれど、私はもう原作キャラとは関わらない。そう決めたから。
「なーんだ、つまんないの!」
でも、あれから1年も経ったのか。時がすぐ過ぎていく。宇髄さん、きっとお忙しいんだろうな。きっとこの花街には来ないだろう。もう、程遠い存在だ。私を忘れて奥さん達と幸せになってほしい。
「…本当に良かったの?」
「姐さんまでやめてください…私は別に」
姐さんが眉を寄せて聞いてくるので笑い飛ばした。でも姐さんは納得がいかない顔をしている。…私だって、右腕が動くならば義勇と錆兎と再会し、守っていきたい。鱗滝さんにもただいまって言いたい。でもこんな身体で何が出来る?ただの足枷にしかならないのに今更戻って役に立つのか?
「…そう」
姐さんは残念そうに呟いた。これでいいの。原作とはおさらばしよう。救えない命に首を突っ込むのはやめるんだ。私が乱入する事で死ぬはずじゃなかったキャラまで死んでしまう可能性だってある。
もう、夢を見るのはやめた。
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❤︎ - 面白かったです〜!!!最後には少しうるっときました…笑もう3年も更新されていない事に驚きです。続きが気になる〜〜!!何年でも待つのでまた更新してくれたら私含め読者達ありがたいです!待ってますね。 (8月24日 21時) (レス) @page41 id: f6dfc22ed3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!!!!!!!! (2022年3月22日 22時) (レス) @page41 id: 4673827fe0 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 続き!続きはどこ?!ねぇ?!((やかましい (2022年2月26日 21時) (レス) @page41 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
とうめい - 終わっちゃった〜…続きが気になります…更新待ってます!! (2021年10月3日 12時) (レス) @page41 id: 4fdb593f0d (このIDを非表示/違反報告)
りあむ(プロフ) - 終わり!?更新待ってます、、、 (2021年10月2日 20時) (レス) @page41 id: 5dcfb8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜餅 | 作成日時:2019年11月17日 20時