さよなら、Iris【あんスタ】

129.決戦前夜 その二 / その三 by M ページ34

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返事を待たず、床にスマホを放り出す。


｢はあ……｣




……そろそろ、疲れました。


本当にめちゃくちゃだ。
なぜか最初、私達『転校生』としか呼ばれなかったし。転校生、2人いるのに。しかも他学年まで『転校生』呼びって何？ 他学年は関係なくね!?


まあでも、家で｢疲れた｣とか言おうものなら、｢そんなの疲れた内に入らない｣ってほざく父親がいるからな。言えないな。


母親は、父親の味方だし。
父親が会社で頑張ってるって話、もう聞き飽きた。
それより、家での父親の態度をどうにかしてよ。罵倒で私の頭が、ぼっかーんってぶっ壊れそう。


弟はもう、そろそろ没交渉と言ってしまってもいいだろうか。｢あんたのこと『姉ちゃん』って呼ぶのヤなんだけど｣って言われたっきり、会話なんて｢箸取って｣とかくらいだし。




――いっそ、泣いてしまえたら。
そうしたら、どれほど楽になれるんだろう。


涙、もう出ないけど。





……うあああぁっ、うがうがあああぁっ！

弟に話やら愚痴やらを聞いてもらったとかいうあんずが羨ましい！


今日の私は情緒が不安定なようだ。やっぱり、疲れてるのかな。



……もういいや。

億劫だけど、積分の問題集やろう。最近ほんと、ひねくれた定積分と面積ばっかなんだよなぁ。




そんな私のことなど、すっかり無視して。

本番は、すぐそこまで迫っていた。




〜〜〜〜




この間……『S1』間近の、放課後。
廊下で俺は、Aを見つけて声をかけた。


｢お、A！ どこ行くんだ？｣


すると、彼女はずんずん歩いてきて、俺の袖口をぐっと掴む。


｢……いやだ｣

｢えっ……？｣

｢私……あたし、また、置いてかれる、の……？｣


か細い声が、震える。


｢やだ、やだよ……そんなの、いやぁっ――！｣


……ごめん。



一昨年も、同じようなこと言ったけど。


でも、今のAが、大丈夫って言ったから。だから俺は、本当に大丈夫なんだと思っていた。

けれど、それはただの強がりで。
Aはずっと、変わらず寂しがりだった。本当は怖くて、大丈夫って言わないと、頑張るって宣言しないと、動けないんだ。


……じゃあ。

もし俺が、ずっと傍に、いるなら……？


その疑問が口から出てこないから、俺はただ、震えるAを見ているしかなかった。









あれから、約10日。
俺の近くに、Aはもう、いない。


ため息をついた瞬間に、LINE特有のバイブレーション音が聞こえた。面倒だとは思いつつも、重い体を何とか起こす。




届いたメッセージを見て、俺は――。

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