さよなら、Dayflower【あんスタ】

72.水底に、沈む。 ページ25

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――あんな楽しそうなま〜くん、久しぶりに見た。
ま〜くんも幼馴染みの輪の外に、自分のコミュニティを見つけたんだよね。


爪が手のひらに食い込む。


――りっちゃんだって、そうだ。
なるちゃんと、ウルフと、影片くんと、泉先輩と、司くんと……新しいコミュニティの中で、生きている。


爪が刺さって、手のひらが痛む。


――もう、いつまでも一緒の幼馴染みじゃいられないんだ。


歯を食いしばる。


――いつかは変わらないといけないなんて、離れないといけないなんて。


きつく食いしばりすぎて、頭まで痛くなる。


――嫌だ、嫌だよ。そんなの嫌だ。


視界が滲んでいく。


私たちの絆が壊れるなんて、絶対に嫌だ。そんなの――







――そんなの、寂しすぎるよ。



私は静かに、目を閉じた。




−−−−




――あれ？



閉じていた目をふと開く。


私たちの関係を壊したのは、私自身だったんじゃないの？


胸を、心臓を、刺すような痛みが貫く。


――なら、そんな私が元通りの関係を望むなんて、おこがましいんじゃないの？


ステージ上の輝きが、『Trickstar』が遠のいて見える。


――そうだ、それこそ『高望み』なんだ。


視界がぼやけて、現実感はだんだんと遠のいていく。


――優しく接してくれる分、彼らは親切なんだ。
理由すら教えてくれなかった『親友』達とは違って、ね。


私だけが沈むように、輝きは視界から、ゆらゆらと暗く遠のいていく。


――だからきっと、私は遠のいていくんだ。




私ひとりだけ。

私ひとりだけが輝きから遠のいて、









――水底に、沈む。




−−−−




次に私の意識に入ったのは、


｢これから先も、俺たちは夢ノ咲学院でアイドルとして輝いていくよ☆｣


という明星くんの台詞だった。
マイクを通さずとも、何言ってるのかギリギリ聞こえた。講堂の端から端までマイク無しで声が届くとか、恐ろしや男子高校生兼アイドル。


｢みんな〜！ 今日は俺たちのライブに来てくれてありがとうっ、できれば末永く『Trickstar』を応援してねっ☆｣


……あんにゃろ、アドリブ入れやがった。全体的に破綻してないからいいけど、終わったら軽〜く説教だな。
私は、小さくため息をついて前方へ向かう。


｢俺たちはこれからもずっとずっと、楽しくて夢中になるようなキラキラした歌と踊りをみんなに贈るよ！｣


と言って、明星くんは投げキスと共に舞台を降りようとする。そして、道路に飛び出しかけて止められる犬のように、氷鷹くんに首根っこを掴まれた。

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