3話 ページ4
躊躇なく、公安部を覗けるようになる程には俺はここに来るのは慣れてしまっているらしい。
俺はいつものように帰り際、公安部に立ち寄りいつものように世間話をする。
「お、伊藤さん!」
「おい、伊藤さん来たぞ!」
「ちょ、静かにしろって」
ここに来始めたのは二ヶ月くらい前からで、初めて来たときはここにいる人全員驚いていたし、なんなら強制的に追いかえされそうになった。というか何十回も追い返されたことがある。
でもここ二ヶ月で彼らは自分達や仕事に危害を加える人間ではないと知ったのか、距離を縮めることができた。
「な、伊藤さんはなんで公安部に来るようになったんですか?」
新人の子が、タメ口と敬語が混じったような言葉を使いながら俺に質問してきた。
「なんか君らと仲良くなりたかったんだよな。切実に。公安のことを良く知る人が知り合いにいてさ、君らはとても興味深く面白いって言ってたからさ、気になっさんだよ。」
「え、そうなんですか!?」
嘘だ。ごめん。
仲良くなりたいってのは、まあ嘘じゃないんだが、それ以上に俺にはここに来たわけがある。
「和希」
ふと名前を呼ばれて振り向くと、風見が俺を見て微笑んでいた。
「待たせたな」
「よし、行くか。じゃあなお前ら!ちゃんと仕事しろよ!」
「わかってますよ!」
「風見、伊藤さんお疲れ様でした!」
そうして俺は公安部を、裕也と一緒に出た。
いや、"風見裕也と仲良くなる"が本当の目的では断じてない。
そもそも、裕也と俺は幼馴染み。仲良くなったのなんてもう25年くらい前。
ちなみに俺が警察になろう思うようになるきっかけを作ったのも裕也。
でも、俺が公安部に通い始めるきっかけを作ったのは、紛れもなく裕也だ。
俺は、裕也が言ったあの言葉を今でもはっきり覚えている。
警視庁を出ると、辺りはもう暗かった。
今日は警視庁の近くにある居酒屋で、少し飲もうと話をしていたのだ。
暫く歩くと、裕也が「なあ、」と声を出した。
「彼らに公安に寄るようになった理由を聞かれた時公安の人達と仲良くなりたかったって言っていたけど、本当の理由じゃないだろ?俺と一緒に帰るために寄るようになったってわけでもないだろ?そうするとなんで今更ってなるし。………本当の理由は何なんだ?」
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作者名:神風 | 作成日時:2018年5月22日 18時