057:違和感 CM ページ8
ｿﾕﾝからの電話を切った後
僕はすぐにﾕﾉﾋｮﾝにLINEを送った。
内容は ありきたりなものだ。
だけどﾕﾉﾋｮﾝは気付くはずだ。
その違和感に。
「ﾁｬﾝﾐﾝの言う通りワナだとしたら、福岡行く必要あるかな…」
「だからこそ行くんですよ」
「でも…」
「不安ですか？」
「そりゃ…」
「僕に任せてくれたらいいから。Aは里帰りだと思って」
「里帰りねぇ…」
飛行機の中 終始腑に落ちない様子のAだったけど、
しばらくすると疲れには勝てなかったのか、スヤスヤと寝息が聞こえてきた。
「何も心配しなくていいよ」
飛行機の予約を取った後
自宅の電話回線を一時的に止めてもらった。
空港近くのホテルを予約して、
福岡のいつも泊まるホテルにも予約を入れた。
ｿﾕﾝに聞いた福岡の病院。
似た名前の病院は存在したけど、
同じ名前の病院は存在しなかった。
違和感を感じるのは
あまりにも単純で稚拙なワナだと思ったからだ。
何が目的なのか分からない。
誰が何を企んでいるのか…
とりあえず敵を知る事。
それが目的だ。
ただのイタズラだとしても
それでも、Aの事を知り過ぎている。
頭に浮かぶのは、Aの元婚約者。
だけど、多分彼は違うだろう。
だったら一体誰が？
「ﾁｬﾝﾐﾝ氏、そんなに眉間に皺を寄せて何か考え事ですか？コーヒーでもお持ちしましょうか？」
「あ、ありがとうございます」
行きのフライトでも一緒だったCAが
にこやかにコーヒーを淹れてくれて
優しげな顔でAにブランケットを架けてくれた。
「予定より早いお帰りでしたね」
「ちょっと人と会うために日本へ」
「どちらへ？」
「福岡です」
他愛もない会話の後
僕も眠りに就いた。
起きたら久々の成田空港に到着していた。
「あ、ﾁｬﾝﾐﾝ着いたよ」
「久しぶりですね、東京」
大きな荷物はそのままアメリカからソウルに送った。
身軽になった僕たちは 福岡行きの飛行機を待つ数人の人たちと一緒にゲート前のベンチに座った。
「明日はどこに行きましょう？」
「え…？」
「予定変更にはなりましたが、まだ2日は東京でゆっくりできますよ」
「でも、これから福岡…」
「ああ…福岡はまた今度にしましょう」
「え」
敵は僕たちの予定を知っている。
僕にはその確信があった。
そうじゃなければ
親のフリして、わざわざ僕たちが不在の自宅に電話を架けるわけがない。
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作成日時：2017年11月6日 23時
