All of me. (ページ40)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:205,298 hit

039:家族ページ40

「姉ちゃん!!」

遥さんが部屋のドアを開けた瞬間

雪崩るように飛び込んできた男。

あまりに自分に似ていて驚いた。

「俺だよ!思い出したか?!」
「…」
「ﾏｼﾞかよ…」

分かりやすく肩を落として

両親と思われる男性と女性の間

弟は大きなため息を吐いた。

「…記憶喪失って、韓流ドラマの中の話だと思ってた」
「まぁでもﾁｬﾝﾐﾝくんは韓国の人だしこれもある意味韓流ﾄﾞﾗﾏなんじゃ…」
「そんなわけないでしょ、ﾊﾞｶじゃないのｱﾝﾀ」
「母さんが言うから!」

「2人とも黙りなさい」

「「…ごめんなさい」」

この家族の変な温度差…

懐かしいというか…何というか…

一つ分かるのは

私はきっと父親似だなという事だけ。

お父さんに叱られて今度はお母さんと弟2人同時に大きなため息を吐いた。

「母さんこんな事言ってるけど…この3か月の間…毎日泣いてたんだ」
「……すみません」
「…本当に何も憶えていないのか？」
「…すみません」

悲しそうな目をしているのは

きっとこの3人だけじゃなく

私も同じだと思う。

家族だと言われたから

こんなこんな気持ちになっているのではない。

きっと私の中の思い出というパーツだけが抜け落ちて

それ以外の私を創り上げるパーツはきっと彼らを憶えているのだ。

「姉ちゃん、佐々木さんも心配してるよ」
「…佐々木さんって…わんちゃん？」
「娘みたいにかわいがってた佐々木さんも忘れたのかよ…」
「…」
「姉ちゃん、しばらくこっちにいた方がいいんじゃないか」
「…」
「実家に戻ったらきっと…何もかも思い出せるよ」
「…」
「それに…婚約者が記憶喪失なんて…ﾁｬﾝﾐﾝくんも可哀想だ」
「…」
「一度婚約を解消した方がいい」

同じ事を考えていたとはいえ

自分以外の人に改めてそう言われると

少し心がｽﾞｷｽﾞｷする。

これも記憶以外の部分で

彼を愛していた証なのだろうか。

「もし…このままお前がﾁｬﾝﾐﾝくんを思い出せなかったらどうするんだ」
「…」
「父さんは…彼の気持ちを考えるといたたまれない…」
「そう…ですね…」

「A…私たちと一緒に帰りましょう」

お母さんが顔を上げて微笑んだ時

心の片隅に小さな安心感が生まれた気がした。

「私…」
「すみません、私…彼女の友人で遥と言います」

一緒に帰ろうと思います。

そう、言葉にしようとした時

まるで遮るように

遥さんが話し出した。