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036:僕のまま CM ページ37

思ったより早く打ち合わせが終わって

福岡滞在の時いつも泊まるホテルの部屋で

ボーっと夜空を眺めていた。

東京ほどではないにしても

高層ビルが立ち並ぶこんな都会じゃ

星なんて見えるはずもない。





「あ…帰ってたんですね…」
「おかえり、A」





Aが帰ってきたのは

それから30分後ぐらいだった。

両手に紙袋をいくつか下げてる。

ヌナと買い物でもしてきたのだろう。





さすがに急な話だったせいもあって

A一人の部屋を取る事はできなくて。

リビングにもう一つベッドを用意してもらった。





「どこに行ってたんですか?」
「買い物して…ごはん食べて…買い物して」
「楽しかったみたいですね」
「はい…とても」





きっと本人は気付いていないだろうけど

Aがこの街に住んでた時に行きつけだった店の袋ばかりだ。





「見せてください」
「え」





戸惑いながらも

さすがに自分の好きな物の事になると

人間は自然と笑顔になるものなのだろう。





「ここのステッチがすごく素敵で、なかなかいい仕事してると思うんです」
「そうなんだ…」
「一目惚れでした」





嬉しそうに 買ってきたばかりの服を並べて

まるで記憶がない事を忘れてるんじゃないかと思うほど

Aは Aのままだった。





『チャンミン、見てこの色』
『色?』
『そう、絶妙だと思わない?』
『僕にはただの青に見えますけど…』
『違うの、ただの青じゃなくて、[碧]』
『・・・』





昔 よくこうやって話してたよね?

あの頃も 今と同じように

キラキラした笑顔で

嬉しそうに

幸せそうに

僕は そんなAを

いつまでも見ていたい そう思っていた。





「今日…買い物しながら思ったんです」
「何を…?」
「私、本当にスタイリストだったのかもしれないって」
「…あはは…信じてないの?」
「信じてないわけじゃないですけど…本当かなーって…」
「ふーん…」
「でも、洋服や靴を見ていると…頭の中にいくつもコーディネートが浮かんで」
「…うん」
「もう…頭からはみ出すぐらいパンパンになって」





僕も きっとあの頃の僕のまま。

今も ずっと

いつまでも見ていたい

そう思っている。

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作成日時:2017年5月20日 0時

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