All of me. (ページ33)

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032:一番最初のﾃﾞｰﾄ　CM ページ33

Aとの一番最初のﾃﾞｰﾄは

映画の予定だった。

ﾂｱｰで日本の地方を回っている時

思いのほか長い滞在となったとある町

滞在先のホテルのすぐ隣が映画館だった。

「こんな映画…聞いたこともないね」
「多分ここの映画館のｵｰﾅｰがマニアックなんでしょうね」

僕ら以外誰もいない小さな映画館。

その真ん中で

B級の恋愛映画を前に

Aはすぐに眠ってしまった。

僕はというと

映画そっちのけで

ポップコーン片手に

恋人の寝顔を見つめていた。

「ﾁｬﾝﾐﾝ起きて」
「はっ…」

いつの間に眠ってしまったのか

映画館を出ると外は真っ暗になっていた。

ﾂｱｰの合間でお互い疲れ過ぎてるねって

大笑いして

近くの公園でﾋﾞｰﾙとたこ焼きで乾杯した。

遠くの空で花火が上がった時

あ、ご褒美貰えた気分。

そう言って笑ったAを見て

思わずｷｽをしたのは

僕以外の誰にもそんな顔して欲しくなくて

きっと

一番最初に持った独占欲のようなものだったのかもしれない。

「ﾁｬﾝﾐﾝ、青のりついてる」

まったく、子供なんだから。

そう言って僕の口元の青のりを取りながら

Aはそっと僕にｷｽをした。

大きな花火が

まるで僕らを祝福してくれてるみたいで

この先何があっても

この日の事は忘れないと心に誓った。

**************

「花火…ですか」
「そう、映画は見れなかったけど、予想外の花火を見ることができました」
「そっか…私たちは仲良しだったのですね」
「そうでもないよ」
「え？」
「まだずっと先だけど…それはまた今度」
「…はい」

お腹を空かせたｼﾞｮｾﾌが

僕らを急かす様にじたばたしている。

「そういえば…このｽﾏﾎにはその時の写真…」
「A、僕たちが最初に恋人になったのは2008年だよ」
「え…そんな前…？」
「びっくりしましたか？」
「はい…とても」
「色々ありましたけど、ずっと一緒ではなかった」
「そう…なんだ…」
「そろそろ始まるよ、ﾊﾟｰﾃｨｰ」

別れていた時の事

とても傷つけた時の事

再会するまでの事

再会してからの事

いずれ全部話す事になるのだろう。

だけど今はまだ

そこまで話す気にはなれない。

今は

やっと会えたこの幸せを

もっと肌で感じていたいから。