レベル６ ページ8
鎮火後、道化師のような男性はロシナンテという名前だということが分かった。
それから彼の生前を包み隠さず教えてくれた。初対面の相手に何故そんなに話すのかと聞けば、「もう終わった事だから」だそうだ。
ドレスローザでの惨劇は耳にしたことがある。ドフラミンゴという名前も知っている。
噂を聞いただけでは伝わらない事が、彼の言葉で鮮明な情景となって目の前に広がるようだった。
(ああ、この人が······)
いつしか船長が言っていた、恩人なのか。
別に船長からそこまで詳しく聞いたこともないけれど、なぜか目の前の彼なんだと確信した。
ロシナンテさんは込み入った過去の話も程々に、船長の幼少期の話を沢山してくれた。
あんまりにも嬉しそうに、楽しそうに話すものだから、つい此方も聞き入ってしまう。
そして一段落着いた頃、ロシナンテさんは私に船長についてどう思うか聞いてきた。
純粋な興味と、不安が入り交じったような目をしていた。船長の事が心配なんだろう。
「······船長は一人で何でもしようとする所があって、協調性という言葉を知らないのかと言うぐらい我儘な所もあるんです」
梅干しやパンを見たらすごい剣幕で怒ってくるし、私たちにはくどくど自分の身を大事にしろと言うくせに自分の事は棚に上げる。それに振り回されているのは言うまでもなくクルーの私たちだ。
と、愚痴にも近い話をいきなりし始めたにも関わらず、ロシナンテさんは興味津々に聞いてくれる。
微笑んだり同情するような表情を見せたりしながら相槌を打っているのを見て、彼がどんな人なのか少しずつ分かってきたような気がした。
「でも、そういうところを引っくるめて、私たちは船長が好きです。少なくとも私にとって船長はかけがえのない恩人です」
不器用な優しさと揺るぎない強さで私たちを引っ張ってくれる、唯一無二の船長。
船長がそんな人になれたのも、ロシナンテさんが幼い頃の船長を救ってくれた過去があるからだろう。
敬意と感謝を持って目の前の彼にありがとうと伝えると、何がなんだか分かっていなさそうにしながら、こちらこそ、と返された。
あれほど果てしなく感じた闇夜は、気付けば青空に呑み込まれ、地平線から覗く太陽が海面を照らしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 783人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水飴(プロフ) - なつみさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！作者の私情の関係にもよりますが、いずれはどちらも書かたら良いなと思っておりますので、お楽しみにして頂けたらと思います！ (2022年9月16日 0時) (
レス) id: 4efe73e95e (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - どっちもみたいです!!!! (2022年9月15日 20時) (レス) @page25 id: dfa30137f5 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - さくにょさん» コメントありがとうございます！頑張ってどちらも書けたら良いなと思っています😌 (2022年9月12日 21時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - エース、コラさん・・。どちらも気になりますね・・！ (2022年9月12日 21時) (レス) @page25 id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - グエグエさん» 初めまして、コメントありがとうございます〜！私のやる気があればいずれどちらも書くと思いますのでお楽しみに...！ゆっくりと更新頑張ります！ (2022年9月12日 11時) (レス) id: 6a94704c3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水飴 | 作成日時：2022年8月20日 16時
