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【試験会場までの道中と姉】
『イル、この店かしら?』
「うん。それで姉さん、此処からはちゃんと偽名で呼んでよ。Aも適当に偽名作って」
『えぇ……?仕方ないわね』
カタカタカタという奇妙な音を立てる大男。その腕に支えられ抱き抱えられているのは仮面をつけた着物の女児。イルミとAである。
『ごめんなさい。注文しても?』
「はいよ」
『ステーキ定食、弱火でじっくり。二人ね』
注文を聞き終えると店主は神妙な顔になり、奥の部屋へと通される。数分後にガタン、と音がしてお腹の中がふわり、と浮き上がる感覚。
どうやら部屋全体がエレベーターになっていたらしい。この下に会場があるのだろう。何ともいえない浮遊感に思わずAは顔を歪める。
『……つくづくハンター試験というのは面倒ね。会場に辿り着くのも試験の範疇なんて』
「ま、そういうことも出来ない雑魚が集まっても仕方ないでしょ。それより偽名は?」
『クッディルゾでいいんじゃない?』
「……バレるよ、それ」
そう言われてもネーミングセンスというものがまるでないのだ。そう言うイルミが付けてくれたっていいのに。真面目に心底そう思う。
ギタラクル、というのは普通にいそうな名前だ。目立つわけでもなく、かといって地味すぎるというわけでもない。普通の中の普通だ。
そうこうしている間にもエレベーターは下へと進んでいく。当然、もう時間もないわけで。あまり良い案が浮かばぬまま唸り続けて。
『モルフォ』
「モルフォ?」
『モルフォ蝶から取ったの。どうせ一時だけの名だし難しく考える必要はないわ』
「姉さんはそろそろ仕事で使う用に偽名作った方が良いと思うんだけどな」
『ゾルディックの名で充分よ』
チン、とハンター試験にしては場違いな音がなる。ゆっくりと扉が開き、ざっと300人ほどの人。無事に試験会場まで辿り着けたようだ。
これからハンター試験が始まる。
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奈那 - とっても面白いです!!私の性癖にドストライクでした!!応援してます!!更新頑張ってください!! (2021年10月17日 12時) (レス) id: 7127803f97 (このIDを非表示/違反報告)
京凛(プロフ) - めっちゃ好きです!!!応援してます!!更新頑張ってください!! (2021年9月11日 20時) (レス) id: c8e77dbc20 (このIDを非表示/違反報告)
セーラ - とっても面白かったです!私の好みドンピシャでした!続き待ってます! (2021年9月8日 15時) (レス) id: 837a48d132 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2021年8月21日 14時