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【キルア=ゾルディックと姉】
生まれてからずっと姉の姿は変わらない。理由を聞いても教えてはくれないが、とにかく姉は大人にならないのだ。気付けば自分も11歳。
姉の背丈を越してしまった。昔はよく姉がしゃがんで目線を合わせてくれたものの、今ではキルアが見下ろすことになる。仕方ないことだが。
「姉ちゃん、ちょっとギブ……!!」
『あら、もう終いなの?』
今日は中庭で追いかけっこ形式の特訓をしていたのだが、どれだけ速く走っても姉に追い付けない。ふわり、と姉は地面に着地し微笑んだ。
『キルもまだまだね』
「なんっで、息切れしないっ、んだよ……」
『キルとは格が違うもの。でも疲れたなら仕方ないわ。今日はここまでにしましょう』
「はぁ!?少し休んだらやれるし!!」
『やり過ぎも体に良くないのよ』
そう言ってAは用意されていた椅子に座ると紅茶を淹れ、優雅に読書をし始める。そういえばこの姉、走ってる間もドレスだった。
身軽な格好の自分と豪華で暑苦しい格好の姉。地面で倒れて息を整える自分と息が切れることなく座って紅茶をすする姉。この差はなんだ。
『それにしても成長したわね、キル』
「は!?」
『何を怒ってるの』
「怒ってねぇーよ!!疲れてんの!!」
『ふふ、昔は私を追いかけることすら出来なかったのに成長したのね』
「……」
そうして喜ぶ姉。結局Aにとってキルアの相手は遊戯同然なのだ。それが悔しくてたまらない。それと同時にとても嬉しく思う。
姉がこうして自分に構ってくれること。成長したね、と褒めてくれる。それだけで満たされた気持ちになるのだから、自分はとても単純だ。
昔は兄さん達ばっかり構ってないで俺とも遊んでよ、とよく泣き付いたものだ。そうすると姉は困ったように微笑んで沢山遊んでくれた。
『昔のキルはよく泣きついてきて……』
「う、うるさい!!とにかく姉ちゃん、早く相手してくれよ。もう時間ないんだろ?」
『……本当ね。もうこんな時間。じゃあ行くわよ。捕まえてごらんなさい』
懐中時計で時間を確認したAは椅子から立ち上がり、走り出す。その背を追いかけてキルアも走り出す。速い、速い、とても速い。
誰よりも優しい姉、誰よりも大好きな姉。
ずっと一緒にいれることを願って。
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奈那 - とっても面白いです!!私の性癖にドストライクでした!!応援してます!!更新頑張ってください!! (2021年10月17日 12時) (レス) id: 7127803f97 (このIDを非表示/違反報告)
京凛(プロフ) - めっちゃ好きです!!!応援してます!!更新頑張ってください!! (2021年9月11日 20時) (レス) id: c8e77dbc20 (このIDを非表示/違反報告)
セーラ - とっても面白かったです!私の好みドンピシャでした!続き待ってます! (2021年9月8日 15時) (レス) id: 837a48d132 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2021年8月21日 14時