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「 …来ちゃったよ 」
本屋に寄った帰り道、前みたいに河川敷の方に向かってみる。
もちろんそこに京本くんの姿はないけど、恋占いに使われていた花は変わらず咲いていた。
こっちおいでよ、ってあの日の彼の声を思い浮かべながら、河川敷に足を踏み入れる。
( 折角来たし…やってみようかな )
恋占い。
並ぶ花の中から、そっと一輪、茎を折って手に取る。
こんなの、使った花に花びらが何枚あったかで変わる、ある意味くじみたいな、何の根拠もない曖昧なもの。
それでも頼りたくなるのは、
それぐらい京本くんの気持ちが分からなくて、知りたいと思ってしまうから。
「 …好き、嫌い、 」
一枚一枚、落ちていく花びら。
運だと頭では分かっていても、減っていく度にドキドキしてしまう。
「 …あ 」
残り三枚になって、自ずと答えが分かってしまった。
二枚引き抜いて、最後の一枚にそっと触れる。
「 …す、 」
口にしようとした言葉は、ひゅ、と横から伸びてきた誰かの手に驚いて声になりきらなかった。
反動で落ちてしまったラスト一枚、自分より一回り大きな手に掴まれている右手。
その白くて角張っている手には見覚えがあって、途端に心臓が大きな音を立て始める。
「 誰に恋してるの？ 」
耳に滑り込んできた声に、胸の奥がぎゅうと縮む感覚がした。
ゆっくりと顔を上げて、手から身体、彼の顔に視線を移せば、ビー玉みたいな瞳と目が合う。
「 …京本くん、なんで 」
「 なんでって、たまたま、帰り道 」
そっか。前もここに居たわけだし、そりゃ通り道だよね。
確かに会えたらいいなと思って来たけれど、まさか本当に会えるなんて。
運良いにも程があるなって驚いてると
「 …なわけないじゃん 」って京本くん。
「 え？ 」
「 帰り道じゃない。むしろこっち来ると遠回り 」
「 …え、でも 」
まだ掴まれたままの私の手を、京本くんがぎゅ、と握り直す。
「 …ここに来れば会えるんじゃないかと思って 」
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作者名：朔×紺
x他1人 | 作成日時：2021年9月18日 9時
