在りし日* ページ6
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追い付けると思っていたのだ。一心に、ただひたすらに、純粋に。
「貴教はお母さん達に似て頭が良いから、きっと将来は才人としてこの国で活躍できるわね」
「まかせてよ、ぜったいに才人になってみせるから！」
「ああ、楽しみに待っているよ、貴教」
私の両親はどちらも才人だった。とても優秀な人で、よく高官のような装いの男たちと話しているところを見た。また家も少々開けがちで、私に会えばよく抱き締めて「愛している」だとか「愛しい子」だとか睦言を囁いてくれたが、教育場へ預けられるまでは両親と過ごす時間より、家に１人でいる時間の方が確実に長かった。そのおかげで８年間ホームシックになることもなく寮で過ごすことが出来たのだが。
初めの数年間は至って心穏やかに日々を過ごすことが出来た。
授業で苦労することもほとんどなく、学友からは尊敬され、教師からはちまちまと褒められる日々。もちろん私より成績の良い同級生は居たが、それ以上に私より成績の低い者が多かったため、別段気にするようなことはなかった。思えばここで早々に気が付くべきだったのだ。
こういう文章においてしばしば「幼心に理解した」という表現が使われることがある。こういった表現は語り手、もしくは語られている人物が天才、またはそれに類する人物であったために使われるのである。天才は生まれた瞬間から天才なのだ。
生まれた瞬間からこの先も、天才ではなかった私は気が付けなかった。いや、「気が付く」ということさえ知らなかったのだ。自らを才人と信じて疑わず、自分が凡人であるという可能性に目もむけず、盲目的に日々を過ごす。天才たちの目には何と愚かな子供に映っただろう。凡人たるこの私にもそう見えたのだ、恐らく同級生たちは憐れむような目で、もしくは見下すような目で私の姿を見ていたことだろう。
「コガ、お前最近どうした？ お前とサクマの間がだいぶ開いてるみたいだが、大丈夫か？ 顔色も悪いみたいだし、一度保健室に行ってきた方がいいんじゃないか？」
「……いえ、ご心配なく」
11歳の時、私はようやく焦りを感じ始めた。これまでと同じかそれ以上の努力をしているはずなのに、悪くはないはずなのにどんどん引き離されていく成績。両親に成績表の複製を送ると「次のテストで頑張ろう」という、当たり障りのない言葉が帰ってきた。私はそれが一番辛かった。叱るならちゃんと厳しく叱ってほしい、慰めるなら噎せるような甘さで慰めてほしい。
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たま(プロフ) - 梟煌さん» 返信ありがとうございます。梟煌さんのボードにお伺いします。 (2020年7月11日 23時) (
レス) id: c513989284 (このIDを非表示/違反報告)
梟煌(プロフ) - たまさん» お声掛けありがとうございます。是非とも、関係を組ませて頂きたく思います。 (2020年7月11日 22時) (レス) id: 41d4a93ac5 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - 失礼します。「叡智の門は開かれない-II-」にライリアーネル・シュレルストとして参加している者です。よろしければ関係を結ばせていただきたいです。 (2020年7月11日 21時) (レス) id: c513989284 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梟煌 | 作者ホームページ：Twitterには生息しています
作成日時：2020年5月29日 15時
