第30話 by暁月 ページ30
side結城遥
僕が昼の間に集まったときには既に多くの人が到着していて、それぞれが自由にその待ち時間を活用していた。
どうやら僕は少々遅すぎたのかもしれない。監獄から他の罪人が出てくる気配もなく、もしかしたら自分が最後だったのではないかと疑わざるをえない状態だった。けれども見張り達が休憩をとるタイミングに合わせるためにはこれしかなかったのだ。
「いよいよですね……」
大丈夫。長い間ここにいた僕なら見張りや番人の行動パターンもだいたい読めている。そもそも経験上、この集まりで取り押さえられることはないだろう。
僕は小さく咳払いをする。
数人がこちらを見る。最早戻れないところまで来ようとしているのだ。1度大きく深呼吸をして、自らの心を落ち着ける。もし戻ってきたとしても見張り達に怪しまれないようにできるだけ下らないことを言う風に。
「昼の間にお集まりの罪人の皆さま方。僕がノートをここに置いた張本人、結城遥と申します」
それに合わせて小さくお辞儀をしてみれば、罪人たちが不思議そうな目で僕を見つめているのが分かる。それらを見返した後に横目で普段なら番人達が突っ立っている辺りを見てみる。まだ戻っては来なそうだ。
「本日ここに集まってもらったのは、とりあえず顔合わせをしていただくためです。えぇ。まだ作戦を話し合うような段階にはありません。怪しまれてしまうのでね」
おちゃらけた風に言ってみれば、皆の不思議そうな目が疑惑の目に変わったようだ。「こいつは大丈夫なのだろうか」と。
「すみませんね。真剣ムードを出したあとには全員処刑が待っていますので」
小声で言ってみればとりあえずなんとか僕に対する不信感は少々拭えたようだ。ただ、皆様にはもうちょっと道化師に付き合っていただきたい。
「で、ここからが本題なのですが、皆さんには毎日のように昼の間に来ていただきたいと思います。理由としては、昼の間には人が多く集まる、という状態を作ることによってそれが当たり前だと思わせたいのです」
人差し指をたてながら僕は説明する。
「そうすることによって夜の住人達が疑いを持ちにくくなるので計画がバレる確率が低下します。昼の間では自由にしてくださって構いません。話し合いは隙をぬって少しずつ行っていこうと思っています」
ちらっと見ると見張り達は定位置に戻ってこようとしているところだった。
「それでは本日はここらで終了と言うことで。勝手で申し訳ないですが、お疲れ様でした」
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カルク(プロフ) - 更新しました!! (2019年7月17日 8時) (レス) id: 46db662a70 (このIDを非表示/違反報告)
カルク(プロフ) - 更新させていただきます! (2019年7月17日 7時) (レス) id: 46db662a70 (このIDを非表示/違反報告)
nekoarisu(プロフ) - 更新させていただきました! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 322193fd57 (このIDを非表示/違反報告)
nekoarisu(プロフ) - 更新させていただきます! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 322193fd57 (このIDを非表示/違反報告)
味噌鯖 - しました! (2019年7月16日 15時) (レス) id: 9ffca39a54 (このIDを非表示/違反報告)
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